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二次方程式のxの係数が偶数?b’を使った解の公式の「便利さと学ぶ意味」
二次方程式の解の公式はご存じですか?
\(x\)の2次方程式、\( ax^2+bx+c=0\)の解は\( \displaystyle x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \)
実はこの解の公式、\(x\)の係数が偶数の場合に簡単な公式があるのをご存知でしょうか?
この記事では、\(x\)の係数が偶数の場合にいわゆる「\(b’\)を使った解の公式」の使い方と、解の公式にまつわる注意点を説明していきたいと思います。
二次方程式の解の公式ってなんでこんな形なの?
はい、では問題です。
はい、どうぞ。(いきなりの問題にも慣れてきたぞ。どうせ「解の公式」を導出しなさい、とか言うんだろ?)
解の公式を導出してください。
よっしゃ!
ん?自信あるね?できるの?
…いいえ、できません。
解の公式は「平方完成」がベースになります。こんなところでも平方完成は使うんですね。
(証明)
\( ax^2+bx+c=0 \)より、
\( \displaystyle a(x^2+\frac{bx}{a})+c=0 \) (ただし、\(a ≠ 0\)とする)
\( \displaystyle a\{ (x+\frac{b}{2a})^2-(\frac{b}{2a})^2 \} +c=0 \)(ここで平方完成を使う)
\( \displaystyle a (x+\frac{b}{2a})^2-\frac{b^2}{4a} +c=0 \)
\( \displaystyle a (x+\frac{b}{2a})^2=\frac{b^2-4ac}{4a} \)
\( \displaystyle a (x+\frac{b}{2a})^2=\frac{b^2-4ac}{4a} \)
\( \displaystyle (x+\frac{b}{2a})^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2} \)
\( \displaystyle x+\frac{b}{2a}=\pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \)(ただし、\(b^2-4ac \geq 0\)とする)
よって、\( \displaystyle x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \)(終)
なるほど…平方完成を使うのか。
二次方程式のxの係数が偶数の場合「b’を使った解の公式」
さて、では\(x\)の係数が偶数だった場合、解の公式はどのようになるでしょうか。
つまり、
\(ax^2+2b’x+c=0\)のときの解の公式は?
ということですね。
先ほどの解の公式にそのまま\(b=2b’\)を代入してみましょう。
\( \displaystyle x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \)に\(b=2b’\)を代入。
\( \displaystyle x=\frac{-2b’ \pm \sqrt{(2b’)^2-4ac}}{2a} \)
\( \displaystyle x=\frac{-2b’ \pm \sqrt{4b’^2-4ac}}{2a} \)
\( \displaystyle x=\frac{-2b’ \pm \sqrt{4(b’^2-ac)}}{2a} \)
\( \displaystyle x=\frac{-2b’ \pm 2\sqrt{b’^2-ac}}{2a} \)
\( \displaystyle x=\frac{-b’ \pm \sqrt{b’^2-ac}}{a} \)
ということで、以下の「b’を使った解の公式」が得られます。
\(ax^2+2b’x+c=0\)のとき、\( \displaystyle x=\frac{-b’ \pm \sqrt{b’^2-ac}}{a} \)
例.\(x\)の2次方程式\( x^2-2x-1=0\)を解け。
\( x^2+2 \cdot(-1) x-1=0\)とみることで、
\(a = 1\)、\(b’ = -1\)、\(c = -1\)として先ほどのb’を使った解の公式を使います。
\( \displaystyle x=\frac{1 \pm \sqrt{(-1)^2-1 \cdot (-1)}}{1} \)
\( \displaystyle x=1 \pm \sqrt{2} \)…(答)
ちなみに、普通の解の公式を使うと次のようになります。
\( \displaystyle x=\frac{2 \pm \sqrt{2^2-4 \cdot 1 \cdot (-1)}}{2 \cdot 1} \)
\( \displaystyle =\frac{2 \pm \sqrt{8}}{2} \)
\( \displaystyle =\frac{2 \pm 2\sqrt{2}}{2} \)
\( \displaystyle x=1 \pm \sqrt{2} \)…(答)
圧倒的に手数、というか計算の楽さが違いますね。
解の公式と、xの係数が偶数のときの解の公式の注意点
こちらが本題です。
実は「解の公式」を使ったり、「b’を使った解の公式」を使う際の注意点もいくつかあります…。
それでは早速問題を解きながら、注意点を押さえていきましょう。
解の公式を使う?
問1.\(x\)の2次方程式\(x^2-4x+3=0\)を解け。
よっしゃ、さっきの公式だ!
(解答)
解の公式より、\( \displaystyle x=\frac{2 \pm \sqrt{2^2-1 \cdot 3}}{1} \)
\( x=2 \pm \sqrt{1} = 2 \pm 1\)
よって、\(x=3 , 1 \)…(答)
できました!
…。
(こっちの方が絶対いい、という別解)
\( x^2-4x+3=0 \)
\( (x-1)(x-3)=0 \)
よって\(x=1 , 3\)…(答)
…。(因数分解できたのか)
これが1つ目の解の公式を使うときの注意点ですね。
「解の公式は万能!だからとりあえずこれを使ってればいいんでしょ?」という人がときどきいます。はっきり言ってその姿勢はキケンです。
なぜなら、数学は「考える」学問なのに、「万能」という性質で思考放棄しているからです。
よく、「これを覚えていればいいんですか?」という質問がきます。数学を解く上で1、2を争うくらいダメな質問だと思います。
数学や、もっと言うと現実世界には、ある程度万能といえるモノがありますが、数学を学ぶ上で重要なことは「条件や状況によって解法を変える思考力を養う」ということです。
これは早めに意識をしていかないと、数学を学ぶ意味が薄れてしまいます。きちんと条件や状況を考えて問題を解いていきましょう。
b’を使った解の公式は必要ない?
問2.\(x\)の2次方程式\(x^2-4x-3=0\)を解け。
よし、これは因数分解できないな。b’を使った解の公式だ!
(解答)
解の公式より、\( \displaystyle x=\frac{2 \pm \sqrt{2^2-1 \cdot(-3)}}{1} \)
\( x=2 \pm \sqrt{7}\)…(答)
…。
どうかしました?
b’を使った解の公式って簡単ですけど、使いにくい、というか…。わざわざ覚えなくてよくないですか?いつもの解の公式でも解けるんでしょ?
まぁ、そうなんだけどねぇ…。
2つ目は「b’を使った解の公式」を使う際の注意点…というか、先程の「学ぶ姿勢」のお話です。
ここは個人的な主義・主張が入ってきますが、私は積極的にこの「b’を使った解の公式」を使った方がいいと思います。
教える人によっては「これは覚えなくていい」と言う人もいます。「正しく覚えていないと間違うから」というのがその主張で、まぁ間違ってはないです。
ですが、「b’を使った解の公式」は圧倒的に楽です。
「楽」=「時間がかからない」「計算ミスが減る」ということです。
「新しいことを覚える」という苦労を回避して、いつまでも「時間をかけて、計算ミスの恐れがある手法」を取り続けるのか、「新しいことを覚える」という苦労をして、「時間と計算ミスを減らす有利」をとるのか…。
私は後者を取ります。もちろん、生徒にも「積極的にこちらを覚えて使いなさい」という指導をします。
実はもっと本質的な理由もあります。こちらにも書いていますので、ぜひ読んでください。
解の公式を使うこんな問題がきたらどうするの?
そりゃもちろん、普通の解の公式だけでもいいんですけどね…。
そうですよ、新しく覚えるの大変だし、間違って覚えてたら元も子もないでしょ?
じゃあ、これ解いてみましょうか。
よし、b’を使った解の公式には頼らないぜ!
問3.\(x\)の2次方程式\(2x^2-6ax-3a^2+5a-2=0\)を解け。
…ん?
どうぞ。解いてください。
…は、はい。えーっと、確認ですけど「\(a\)は定数」ということでよろしいでしょうか?
「\(x\)の2次方程式」と言ってますからね。「\(x\)が変数」「\(a\)が定数」のイメージでお願いします。
ちょっと待ってくださいね…。
\(x^2\)の係数→\(2\)
\(x\)の係数→\(-6a\)
定数項→\(-3a^2+5a-2\)
か…。複雑だな。
(解答)
解の公式より、\( \displaystyle x=\frac{6a \pm \sqrt{(6a)^2-4 \cdot 2 \cdot (-3a^2+5a-2)}}{2 \cdot 2}\)
\( \displaystyle =\frac{6a \pm \sqrt{36a^2+24a^2+40a-16}}{4}\)
\( \displaystyle x=\frac{6a \pm \sqrt{60a^2+40a-16}}{4}\)…(答)
よし、なんとかできましたよ。合ってますか?
ぶっぶー!!ちがいまーす!!
…。(ちくしょう。ムズカシイ問題出しやがって、いじわるめぇ…)
ルートの中身をまだ整理できますよ。
ルートの中身はちょっと複雑すぎるな…。
\( \displaystyle x=\frac{6a \pm \sqrt{60a^2+40a-16}}{4}\)
\( \displaystyle =\frac{6a \pm \sqrt{4(15a^2+10a-4)}}{4}\)
\( \displaystyle =\frac{6a \pm 2\sqrt{15a^2+10a-4}}{4}\)
\( \displaystyle x=\frac{3a \pm \sqrt{15a^2+10a-4}}{2}\)…(答)
んー、結構大変だなぁ。
こういうときのためにも「b’を使った解の公式」は覚えておいた方がいいですね。「b’を使った解の公式」を使うと、
\(x^2\)の係数→\(2\)
\(x\)の係数→\(-3a\)
定数項→\(-3a^2+5a-2\)
ですね。
(解答)
解の公式より、\( \displaystyle x=\frac{3a \pm \sqrt{(3a)^2- 2 \cdot (-3a^2+5a-2)}}{2}\)
\( \displaystyle =\frac{3a \pm \sqrt{9a^2+6a^2+10a-4}}{2}\)
\( \displaystyle x=\frac{3a \pm \sqrt{15a^2+10a-4}}{2}\)…(答)
む…。(計算はこっちの方が楽だな。)
方程式が複雑になればなるほど「b’を使った解の公式」は有利です。模試にもたまに出たりするので、覚えておいて損はないと思います。
ちゃんと覚えておかないといけない、という点に注意すれば、かなり楽な計算で済むので積極的に使っていきましょう。
xの係数が偶数のときの解の公式まとめ
「b’を使った解の公式」は計算がかなり楽です。正しく覚えて、積極的に使っていきましょう。
「b’を使った解の公式」は覚えなくてよい、という意見もありますが、それは「数学の問題を解く上で」という意味ですね。
確かにそれも一理あるのですが、我々は「ただ数学の問題が解ければいい」というスタンスで勉強をしていません。
「b’を使った解の公式」を覚えて使うことには一定の意味があるので、この記事を読んだ人は、ぜひ覚えて使ってほしいです。