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「y=ax+bと置くこと」の本質的な問題とは?
さて、いつものようにいきなり問題ですが、
問.点\((2,3)\)を通る、傾き2の直線の方程式を求めてください。
この問題自体は全然難しくないはずです。おそらく中学生でも解けます。
まぁ、忘れている人もいるかもしれませんが、それはいつものとおり問題ないです。解き方自体は、記事を読み進めながら押さえていただければOKです。
ただ、ですね…これ、答えを出す、以上に本質的な問題をはらんでるんですよね。
この記事では、この問題を通して見える「学ぶ姿勢」について話をしていきます。
数学、というよりも勉強の話ですね。
さっきの問題、解いてみよう
2つ解答例がありますので、それぞれ見ていきましょう。
(解答1)
直線の傾きは2なので、求める式を\(y=2x+b\)とおく。
これが点\((2,3)\)を通るので、
\(3=2 \cdot 2+b\)
\(b=-1\)
よって、求める方程式は\(y=2x-1\)…(答)
まぁ、特に問題はないと思います。直線の式を「\(y=ax+b\)の形でおく」という方法で、中学生や高校1年生ならこの解き方でOKです。
もう一つの解答は、
(解答2)
求める方程式は
\(y-3 = 2(x-2)\)
よって、\(y=2x-1\)…(答)
なんのこと?と思う人もいると思いますが、これは高校2年生で習う「数学II」の知識ですね。一発で出すことができます。
なぜこのような式になるのかは、以下の記事もあわせてご覧ください。
なにが問題なの?
問題なのは(解答1)で解く人です。
正確には、(解答2)の方法を知っているのに(解答1)で解く人です。
もちろん、中学生や高校1年生で(解法2)を知らない人は(解法1)を使って解いて全く問題はありません。
いや、確かに(解法2)は習ったけど、(解法1)でも解けるじゃない…。何が問題なの?((解法1)で解いちゃったよ)
例えば、テストで(解法1)を使って解いたら○をもらえるでしょう。むしろ×をつけられたらモンクを言っていいと思います。数学は、論理的に正しければ、解き方は人それぞれだからです。数学は自由な学問です。
ですが、日頃(解法2)を知っているのに(解法1)で解く生徒は、結構しっかりと指導します。
「数学的にダメだ」という話ではなく「勉強の姿勢」の話です。
(解法2)を知っていて(解法1)で解く人の心理
(解法2)を知っていて(解法1)で解く人の何が問題なのか。
(解法1)は恐らく中学校で習う解法です。
つまり、(解法2)を習ったのに(解法1)で解く人は、
「どうせ解けるんだから、新しいことを学ぶ必要ないじゃん。中学校で習ったやり方でいいや。」
という考え方なんですね。大学受験生でも、(解法1)で解いたりする人がいます。
数学は、新しい知識を積み上げていく学問です。
数学だけでなく、世の中は、どんどん新しい知識・技術が更新されていきます。
IT技術・インターネット技術が向上する現代社会では、なおさらです。
その新しい知識・技術をキャッチアップする姿勢、というのがなければあっという間に置いていかれます。
これは、高校教員時代(2021年度)の話ですが、
Excelを使って点数を手入力して、なんと、電卓を叩いて成績を出している先生がいました。
しかも1人、2人ではないんですよね。
これ…まずいですよね?
日本はこういう姿勢が古すぎますね。学ぶ姿勢や周りから置いていかれる危機感が少なすぎです。
この問題を解くときに、(解法2)を教えた上で、(解法1)で解いている生徒がいたら、必ずこの話をします。
せめてこれから大人になっていく生徒には「新しいことを学ぶ姿勢。古く、非効率な体制を疑う姿勢。」というのをきちんと学んで欲しいと思います。
もちろん、今働き盛りの大人も、です。
特に、この【クマの数学日記】に辿り着いた人は、恐らく学ぶ意識が高い人だと思います。そういう人こそ、単純に「数学をやった、思考力が養われた、よかった!」で終わらせるのではなく、こういった学ぶ姿勢、ひいては今やっている非効率な体制からの脱却を意識して欲しいな、と思います。
そのあたりは、こちらの記事でも少し説明をしています。
まとめ
今回はどちらかというと、「勉強方法」や「学ぶ姿勢」の話でした。
数学は「論理を純粋に抜き出した学問」です。
なので、他の教科にはない「純粋に考える力」を養うことができます。もちろん、他の教科を学ぶことで「考える力」をつけることも可能ですが、やはりそれに特化した数学は他教科よりも「純粋に考える力」を身につけることができます。
話は変わりますが、最近のトレンドである「数学の実生活との関わり」というのは正直私自身は疑問をもっています。まぁここは個人の意見なのでどうでもいい部分ですが。
無理矢理実生活に落とし込まなくても、数学は十分に実生活の役に立ちます。問題は「それをきちんと学校で教えているのかな?」という部分です。
今回の例のように、簡単な数学の問題を解くことでも、実は思考過程や学習姿勢の問題点を洗い出すことができます。
この【クマの数学日記】で、数学の知識・技術だけでなく、それを通して得られる「思考過程」「学ぶ姿勢」などを意識してほしいな、と思います。