グラフの平行移動は全部同じ?平行移動はこれだけで完璧!

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さて皆さん、いきなりですが問題です。

関数\(y=(x-1)^2+1\)が表すグラフの頂点の座標を求めよ。

答えは(1,1)ですね。

「簡単!」「あぁ、なんかあったなぁ…」「なんのこっちゃ?」…色々とリアクションがあると思いますが、簡単に説明すると、

二次関数\(y=a(x-p)^2+q\)が表すグラフの頂点の座標は\( (p , q)\)です。

なので、\(y=(x-1)^2+1\)のグラフの頂点の座標は(1,1)なんですね。

しかし、ここで疑問に思うのは、

「なんで\(-p\)を見て『頂点の\(x\)座標を\(p\)』と判断して、\(+q\)を見て『頂点の\(y\)座標を\(q\)』と判断するの?」

というところではないでしょうか。マイナスがついたり、つかなかったり…わかりにくいですよね?

「なんでって…そう習ったから」と、こういうところに疑問をもたないのは勿体無いです。

実はここが理解できると、この後「グラフ(や図)の平行移動」が全て同じように理解できます。

ということで、この記事では「グラフ(や図)の平行移動」について話をしていきます。

目次

グラフや図の平行移動をどう説明するか

たろぅ

せんせ

どうかしましたか?

たろぅ

せんせい、この2次関数のグラフの頂点ってのは、なんでこんな変な読みとり方するんですか?

せんせ

?…あぁ、平行移動、というか、\(y=a(x-p)^2+q\)の頂点を\((p,q)\)と読む話ですね。確かに\(x\)座標と\(y\)座標でマイナスを無視して読むか、そのまま読むかで違いが出るのは気持ち悪いですよね。

たろぅ

それです。なんでですか?

せんせ

いい質問ですね、少し数学的な焦点が合ってきましたね。
これは数学IIの「軌跡」の話を知っていると理解がしやすいのですが、ついでだから説明しちゃいますか。

たろぅ

お願いします!

実はこれ、数学IIの「軌跡」の話なんですね。

教科書によっては、数学Iの「2次関数」に説明が載っていることもありますが、「軌跡」の話を知らないとわかりにくいので、先にそちらを説明します。

軌跡とは

「軌跡」というのは、ある条件を満たしながら点が動きます。その点が動く軌跡(動く跡)の方程式を求める、という話です。

やり方としては…

  1. 求める軌跡の動点の座標を\((x,y)\)とおく。
  2. その\(x\)、\(y\)の関係式を条件から求める。
せんせ

本当は軌跡を求める注意点があったり、いくつか例題をあげた方がいいのですが、この記事のメインは「平行移動」なので、早速そっちの話を進めます。

平行移動したグラフを表す関数の実際の求め方は、

  1. 元のグラフ(図)上の動点をQとする。Qはグラフ(図)をくまなく動き回る。
  2. Qに対応する、平行移動した先の点をP\((x,y)\)とおく。
  3. Pの軌跡を求めることで、平行移動したグラフ(図)の式を求める。

という流れです。

平行移動

さて、では早速、平行移動した先のグラフ(図)の式を求めていきます。

せんせ

ちょっと抽象的な話になりますが、注釈を入れながら進めていきます。ですが、このような抽象的な式を使った議論も数学では重要です。
少しずつ慣れていきましょう。

① 元のグラフを表す関数を\(y=f(x)\)として、そのグラフ上を動く点をQ\((p,q)\)とします。

平行移動1

\(x\)軸方向に\(a\)、\(y\)軸方向に\(b\)だけ平行移動したグラフを表す関数を求めたい。これがゴールですね。先ほど説明したように、点Qを\(x\)軸方向に\(a\)、\(y\)軸方向に\(b\)だけ平行移動した点PをP\((x,y)\)とします。

平行移動2
せんせ

このP\((x,y)\)としたときの\(x\)、\(y\)の関係式を求めれば軌跡を求めることができる=平行移動したグラフの関数を求めることができる、というのがゴールですね。

③ ところで、この\(x\)、\(y\)の関係式を求めるために、先ほどのQ\((p,q)\)について考えます。このQ\((p,q)\)は\(y=f(x)\)のグラフ上にあるので、\(q=f(p)\)という式が成り立ちます。

④ 一方、欲しいのは\(x\)、\(y\)の関係式ですので、\(x\)、\(y\)と\(p\)、\(q\)の関係を考えます。点Qを\(x\)軸方向に\(a\)、\(y\)軸方向に\(b\)だけ平行移動した点PをP\( (x,y) \)としているので、以下の関係を満たします。
\(x = p+a\)、\(y = q+b\)

⑤ くどいようですが、欲しいのは\(x\)、\(y\)の関係式ですので、先ほどの\(x = p+a\)、\(y = q+b\)を変形して、
\(p = x-a\)、\(q = y-b\)とします。
そして、\(q=f(p)\)の式に代入すると、
\( y-b = f(x-a) \)という式が得られます。

せんせ

この式が\(x\)、\(y\)の関係式ですので、求める軌跡の方程式(=平行移動した式)ですね。

ということで、平行移動に関して、以下の式を得ることができます。

\( y=f(x) \)を\(x\)軸方向に\(a\)、\(y\)軸方向に\(b\)だけ平行移動したグラフを表す関数は、

\( y-b=f(x-a)\)で求めることができる。

言い換えると、

\(x \rightarrow x-a\)、\(y \rightarrow y-b \)と置き換えれば、平行移動したグラフを求めることができる。

この考え方はかなり重要です。必ず押さえておいてください。

で、2次関数の平行移動は?

では、冒頭の

関数\(y=(x-1)^2+1\)が表すグラフの頂点の座標を求めよ。→答え(1,1)

で、確認をしていきましょう。

せんせ

さっきの疑問は、実は平行移動で説明ができます。
結論から言うと、これは\(y=x^2\)のグラフを平行移動させたものなんですね。
ちなみに\(y=x^2\)のグラフの頂点はどこですか?

たろぅ

えー、(0,0)、原点です。

せんせ

じゃあ、この頂点を(1,1)に平行移動させましょう。

平行移動は、「基準となるわかりやすい点」で話をしていきます。今回の場合は「頂点」で考えましょう。

頂点を(0,0)から(1,1)に移動させるには、

\(x\)軸方向に\(1\)、\(y\)軸方向に\(1\)だけ平行移動する必要があります。

つまり、先ほど確認した「平行移動」で言うと、\(x \rightarrow x-1\)、\(y \rightarrow y-1 \)と置き換えれば移動した式が求められる、ということになりますね。

せんせ

では、置き換えてみましょう。

\(x \rightarrow x-1\)、\(y \rightarrow y-1 \)と置き換えると、

\( y-1 = (x-1)^2\)となります。

\(x^2\)の置き換えがわかりにくいですが、\(x^2=(x)^2\)である、と考えてください。

\( y-1 = (x-1)^2\)より、\( y = (x-1)^2+1\)ですね。

たろぅ

あ!「平行移動」ってアプローチで、頂点が(1,1)の式を求めることができたぞ!

せんせ

はい、では質問です。

たろぅ

はい。(なんだよ、なんか掴みかけた気がしたのに…)

せんせ

置き換えの感覚からすると、\((x-1)^2\)が\(x\)軸方向に1だけ平行移動したもの、という方がわかりやすいと思いますが、\(y\)軸方向の平行移動、\(y=(x-1)^2+1\)の\(+1\)はどこからきたでしょうか?

たろぅ

んー…。\(y-1\) の\(-1\)を移項したときに出てきた…んですかね?

正解です!

ということで、冒頭の、

「なんで\(-p\)を見て頂点の\(x\)座標を\(p\)と判断して、\(+q\)を見て頂点の\(y\)座標を\(q\)と判断するの?」

という疑問については、\(+q\)を見て頂点の\(y\)座標を\(q\)と判断というのが、もともと、

\( y-q = a(x-p)^2\)

という形だったから、なんですね。

基本的に「\(y\)が\(x\)の関数」という場合、 \(y=\)の形にしておきます。よって、\(-q\)を移項して\(+q\)となり、頂点の\(x\)座標と\(y\)座標の読み方にちぐはぐな状況が生まれた、というわけです。

平方完成のやり方や応用方法に関してはこちらの記事をご覧ください。

すごいぞ!平行移動!

この、「置き換えで平行移動」の感覚のスゴいところは、

抽象的な話で議論したので、逆に応用範囲が広い

という点です。

先ほどの議論で出てきた「\(y=f(x)\)」「Q\((p,q)\)とする」「\(x\)軸方向に\(a\)平行移動する」なんかは、わかりにくかったのではないでしょうか。

たろぅ

\(f(x)\)ってなんじゃい!

と思った人もいるかと思います。

ですが、「とりあえず一般的に関数を\(f(x)\)とするんだな」くらいの、抽象的ですが本質を掴んだ(今回の例で言えば「関数」を\(f(x)\)とするんだな、など)理解は数学において重要です。

なぜなら応用範囲が広くなるからです。

特に数学IIでは、グラフや図を平行移動させる関数や方程式が、公式のようにバンバン出てきます。

はっきり言っていちいち覚えるだけ無駄です。ベースとなる式と、この平行移動の考え方を押さえていれば、ほとんど覚える必要はありません。

せんせ

具体例から抽象例に考え方を拡張すれば、応用範囲が広がります。
逆に、抽象例を押さえれば、具体例へどんどん応用できるようになります。

ちなみに、長年教員をやっていましたが、抽象的に考えることが苦手な人が増えている感じがしますね。手元に何か具体例がないと考えられない、という感じですが、抽象的なイメージはとても重要です。

抽象的な考え方は、思考のベースになります。そこを鍛えないと、数学の勉強をしているフリになります。せっかく数学を勉強しているなら、抽象的な思考に触れて、鍛えていきましょう。

せんせ

それでは、「抽象的な考え方」の威力を見ていただきましょう!

直線の方程式

点\( (p,q) \)を通る、傾き\(m\)の直線の方程式は

\( y-q = m(x-p) \)

これなんかはそのままですね。

原点を通る、傾き\(m\)の直線は\(y=mx\)です。

このとき、平行移動の点としてわかりやすいのは原点\((0,0)\)ですね。\((0,0)\)が\((p,q)\)に平行移動した、と考えます。

直線の平行移動

つまり、\(x \rightarrow x-p\)、\(y \rightarrow y-q \)と置き換えると先ほどの、

\( y-q = m(x-p) \)が得られます。

たろぅ

なるほど。

円の方程式

原点中心、半径\(r\)の円の方程式は次のようになります。

\( x^2+y^2=r^2\)

中心が\((a,b)\)、半径\(r\)の円の方程式は次のようになります。

\((x-a)^2+(y-b)^2=r^2\)

これも平行移動ですね。\(x \rightarrow x-a\)、\(y \rightarrow y-b \)と置き換えていますね。

たろぅ

なるほど…。

円の平行移動

三角・指数・対数関数

例えば、三角関数

\(\displaystyle y= \sin{(x+\frac{\pi}{4})}\)は\(\displaystyle y= \sin{ \{ x-(-\frac{\pi}{4}) \} }\)とみなすことで、\( y=\sin{x}\)を\(x\)軸方向へ\( \displaystyle -\frac{\pi}{4} \)平行移動したものとなります。

三角関数の平行移動1
たろぅ

…ほう。

\(\displaystyle y=\sin{(2x-\frac{\pi}{2})}\)なんかはちょっと注意がいりますね。

\(y=\sin{2x}\)を\(x\)軸方向へ\( \displaystyle \frac{\pi}{2} \)平行移動したもの、と思いがちですが、ここは2でくくって\(\displaystyle y=\sin{2(x-\frac{\pi}{4}) } \)としないといけません。(逆に\(y=\sin{2x}\)を\(x\)軸方向へ\( \displaystyle \frac{\pi}{2} \)平行移動したものは\(\displaystyle x \rightarrow x-\frac{\pi}{2}\)と置き換えて \(\displaystyle y=\sin{2(x-\frac{\pi}{2})}=\sin{(2x-\pi)}\)になります。)

この状態で読むと、\(y=\sin{2x}\)を\(x\)軸方向へ\( \displaystyle \frac{\pi}{4} \)平行移動したものとなります。

三角関数の平行移動2
たろぅ

ふーん…。

指数関数の\(y=2^{x-1}+1\)は\(y-1=2^{x-1}\)と変形することで、\(y=2^x\)の\(x \rightarrow x-1\)、\(y \rightarrow y-1 \)と置き換えた形になるので、\(x\)軸方向に\(1\)、\(y\)軸方向に\(1\)だけ平行移動したものになります。

指数関数の平行移動
たろぅ

はぁ…。

対数関数の\(y=\log_2(x+1)\)は\(y=\log_2 x\)のグラフを\(x \rightarrow x+1\)に置き換えているので、\(x\)軸方向に\(-1\)だけ平行移動したもの、となります。

対数関数の平行移動
たろぅ

…(そろそろよくない?)

ちょっとくどいのでそろそろ止めますが、実はまだまだ他にも例があります。

もう一度重要なことなので言いますが、これが抽象的な考え方の力です。応用範囲がとにかく広がります。

なぜか、という理由も重要です。抽象的な論理の組み立ては、具体的な応用にも繋がりますが、思考力そのものに直結するからです。

苦手だな、という人ほど、積極的に抽象論に触れて慣れていきましょう。

たろぅ

数学道は険しい…。

まとめ

結構長くなりましたが、平行移動は実践的にもよく使う手段です。

が、どちらかというと、その過程で抽象的な考え方に触れて欲しいな、と思います。

この記事の前半「グラフや図の平行移動をどう説明するか」をゆっくりと読んで理解して欲しいな、と思います。

ちょっと一息

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