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組み合わせ等を階乗でなぜ割るのか?具体例で説明
場合の数をやっていて疑問に思うものの一つに「組み合わせや同じものを含む順列を階乗でなぜ割るのか?」があります。よくわからないまま覚えてしまっている人も多いと思いますが、理解しておけば応用範囲の広い考え方ですので、ぜひマスターしましょう!
- 組み合わせや同じものを含む順列を階乗でなぜ割るのか?が知りたい!
- 組み合わせや同じものを含む順列を階乗でなぜ割るのか?を知って何かいいことあるの?
組み合わせを階乗で割る理由
「組み合わせを」と書きましたが、基本的に全て同じ理由で階乗で割ります。
流れとしては「順番をつけて並べる」→「同じものとみなせる並べ方を階乗で割ることで一つにまとめる」という感じです。
組み合わせを例に見ていきましょう。
例1.1、2、3、4、5の5つの数字から2つとってくる組み合わせを求める。
答えは
$${}_5C_2=\frac{5 \cdot 4 }{2 \cdot 1}=10(通り)$$
となります。
さて、ではこの解答で、なぜ\(2 \cdot 1=2!\)で割るのでしょうか?説明していきたいと思います。
流れ1「順番をつけて並べる」
割ることを考える前に、分子の\(5 \cdot 4 = 20\)について考えていきます。この20(通り)の正体は、「5個の数字から2個とってきて並べる並べ方」なのです。
ひとまず、順番をつけて並べる方が計算しやすいのです。
それでは、この20通り、全部書き出してみましょう!
え…20個も?大変じゃないですか…。
理解するためにはしっかり手を動かすことも大事ですよ。
はーい…
(1,2) | (1,3) | (1,4) | (1,5) | (2,3) | (2,4) | (2,5) | (3,4) | (3,5) | (4,5) |
(2,1) | (3,1) | (4,1) | (5,1) | (3,2) | (4,2) | (5,2) | (4,3) | (5,3) | (5,4) |
これで全部かな?
ん?これ、上下に見たら、組み合わせとしては同じじゃない?
そりゃそうだよ。まず2個の数字を組み合わせを考えて、それからその2個の並べ方を上下に書いたんだから。
…
…?
流れ2「同じものとみなせる並べ方を階乗で割ることで一つにまとめる」
はなこさんのように、この表を見て気づいた人もいると思いますが「組み合わせ」として考えたとき、例えば1番左の列(1,2)と(2,1)は同じものだと考えることができます。
その隣も、その隣も…それぞれの列、2つのものが同じものだと考えることができます。
たろうくんは、無意識のうちに「組み合わせ」→「並べ方」という感覚で並べていたようですが、逆に組み合わせを求めるために「並べ方」から「組み合わせ」に戻しているのです。
では、戻すためにどうするかというと、2個の数字の並べ方で割ってあげればよいのです。
ですので、それぞれの列1つにまとめないといけないので、\(2 \cdot 1=2!\)で割ってあげることで\(20 \div 2! =10\)(通り)となるのです!
んー…なんだかわかったような、わからないような。\(2 \cdot 1=2!\)ってどこから出てくるか微妙にわからないんだけど…。
では、もう一つ組み合わせを使った例を見てみましょう。
例2.1、2、3、4の4つの数字から3つとってくる組み合わせを求める。
答えは
$${}_4C_3=\frac{4 \cdot 3 \cdot 2 }{3 \cdot 2 \cdot 1}=4(通り)$$
です。\({}_4C_3={}_4C_1=4\)と計算する人も多いと思いますが、今回は説明のため、上の計算でいきます。
例1と同じように考えてみます。
流れ1「順番をつけて並べる」
分子の\(4 \cdot 3\cdot 2 = 24\)(通り)を書き並べてみます。4個の数字から3個とって並べる並べ方です。
はい、じゃあ書き出して。
さっきより多いんですけど…。
(1,2,3) | (1,2,4) | (1,3,4) | (2,3,4) |
(1,3,2) | (1,4,2) | (1,4,3) | (2,4,3) |
(2,1,3) | (2,1,4) | (3,1,4) | (3,2,4) |
(2,3,1) | (2,4,1) | (3,4,1) | (3,4,2) |
(3,1,2) | (4,1,2) | (4,1,3) | (4,2,3) |
(3,2,1) | (4,2,1) | (4,3,1) | (4,3,2) |
またさっきみたいに、組み合わせを考えてからそれを並べたの?
うん。今回は組み合わせを考えたあと、3個の数字を並べないといけなかったから大変だったよ。6通りずつもあったよ。
自分でほぼ答え言っちゃってるじゃない。
流れ2「同じものとみなせる並べ方を階乗で割ることで一つにまとめる」
先ほどの例と同様に、縦の列6つのものが同じものとみなせます。
ではこの「6」という数字はどこからきているのでしょうか?
縦の列を見てくれたらわかると思うのですが、それぞれの列は同じ組み合わせの数字で、その3つの数字を並べたものになっています。
つまり、同じ組み合わせとみなせるものは3つの数字の並べ方、\(3!=3\cdot2\cdot1=6\)(通り)ある、ということです。
なるほど!まずは4個の数字から3個とってきて並べる並べ方を計算して、組み合せとして考えるなら「同じとみなせるパターン」=「3つの数字の並べ方(3!)」で割ってやって1つにまとめる、ということだな。
・順番をつけて並べた方が計算しやすいので、まずは順番をつけて並べる。
・順番をつけて並べたときに、取ってきた個数の並べ方だけ同じ組み合わせと見なせるものが存在するので、取ってきた個数の並べ方で割ってやると組み合わせの数が計算できる。
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同じものを含む順列を階乗で割る理由
もう少し具体例を考えてみましょう。いわゆる「同じものを含む順列」を階乗で割る理由も組み合わせと同じです。
例.\(a\)、\(a\)、\(a\)、\(b\)、\(b\)、\(c\)の6文字を並べる並べ方を求める。
答えは
$$\frac{6!}{3!2!}=\frac{6\cdot5\cdot4\cdot3!}{3!\cdot2\cdot1}=60(通り)$$
です。
ここでも\(6!\)を\(3!2!\)で割っています。どういうことでしょう?先ほどと同様に考えてみましょう。
流れ1「順番をつけて並べる」
分子は\(6!\)となっていますが、これは6個のものを並べる並べ方です。
しかし、こちらで説明しているように階乗の計算は「6個のものはお互いに異なる別ものである」必要があります。
じゃあこの\(6!\)の意味は?6つのアルファベットを別物と考えてるの?
その通りです。前述したように「順番をつけて並べた方が計算しやすい」ので、とりあえず6個のアルファベットを並べる、という計算をします。しかし、6個のアルファベットは別ものでなければ\(6!\)という計算はできないので、便宜上、
\(a_{\color{#009e73}{1}}\)、\(a_{\color{#009e73}{2}}\)、\(a_{\color{#009e73}{3}}\)、\(b_{\color{#BC69F8}{1}}\)、\(b_{\color{#BC69F8}{2}}\)、\(c\)
という感じで、添字などをつけて区別して並べた、と考えるといいでしょう。
流れ2「同じものとみなせる並べ方を階乗で割ることで一つにまとめる」
組み合わせの例のように、分子の\(6!=720\)(通り)をすべて書き出したいのですが、さすがに大変なので、並び方「\(b\)、\(a\)、\(a\)、\(b\)、\(a\)、\(c\)」となるものを考えてみます。
「流れ1」で計算した\(6!\)の中に「\(b\)、\(a\)、\(a\)、\(b\)、\(a\)、\(c\)」と見なせるものがいくつあるか考えます。「\(6!\)の中に」ですから、添字を含めて考えたもの、と思ってください。
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}c\) |
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{2}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}c\) |
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}c\) |
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{1}}c\) |
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}a_{\color{#009e73}{1}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{2}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}a_{\color{#009e73}{1}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{2}}c\) |
\(b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{3}}a_{\color{#009e73}{2}}b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{1}}c\) | \(b_{\color{#BC69F8}{2}}a_{\color{#009e73}{3}}a_{\color{#009e73}{2}}b_{\color{#BC69F8}{1}}a_{\color{#009e73}{1}}c\) |
これらはすべて「\(b\)、\(a\)、\(a\)、\(b\)、\(a\)、\(c\)」と見なせます。つまり、この12個が(区別をつけない)並び方としては1つのものと見なせるのですが、この「12」はどこからきたのでしょうか?
これも表を見てもらえればわかると思います。
左の列の縦の6個は\(a_{\color{#009e73}{1}}\)、\(a_{\color{#009e73}{2}}\)、\(a_{\color{#009e73}{3}}\)の並び方になっています。\(a_{\color{#009e73}{1}}\)、\(a_{\color{#009e73}{2}}\)、\(a_{\color{#009e73}{3}}\)の並び方なので、\(3!=6\)(通り)ですね。
一方で、\(b\)に関しては、左から見て\(b_{\color{#BC69F8}{1}}\)、\(b_{\color{#BC69F8}{2}}\)で固定されていることがわかると思います。
その隣の列を見てみると、縦の6個は\(a_{\color{#009e73}{1}}\)、\(a_{\color{#009e73}{2}}\)、\(a_{\color{#009e73}{3}}\)の並び方ですが、\(b\)に関しては、左から見て\(b_{\color{#BC69F8}{2}}\)、\(b_{\color{#BC69F8}{1}}\)となっています。
つまり、12という数字は、
「\(a_{\color{#009e73}{1}}\)、\(a_{\color{#009e73}{2}}\)、\(a_{\color{#009e73}{3}}\)の並び方」\(\times\)「\(b_{\color{#BC69F8}{1}}\)、\(b_{\color{#BC69F8}{2}}\)の並び方」=\(3!\times2!\)
からきているのです。
まとめると、すべてのアルファベットの並べ方は、
区別をすれば\(6!=720\)(通り)、
実際には区別がつかないのですが、その720通りのうち同じと見なせるものは、上の例と同様に\(3!\times2!\)(通り)ずつあるはずです。
「それぞれの(区別がつかない)並べ方に対して、アルファベットに区別をつけたらそのパターン数は\(3!\times2!\)(通り)ずつあるはず」と捉えることが重要です。
つまり、逆に\(6!\)を\(3!2!\)で割ってやれば、区別なしの並び方を求めることができる、ということです。
一旦区別をつけて並べておいて、その後で同じと見なせるものを、割ることで1つにまとめてやるんだな。で、その割る数は「添字のついたものの並べ方」というイメージだな。
組み分けを階乗で割るパターン
次の例まで理解できたら、「同じと見なせるものを階乗で割る」という操作は大丈夫でしょう。
よし!頑張るぞ!
例.9人を以下の通りに組み分けするパターンは何通りあるか?
(1)A、B、Cの3つのグループに分ける
(2)3つのグループに分ける
(3)2人、3人、4人の3つのグループに分ける
(1)の解答
まずAのグループに入る人を選びます。
選ぶだけですので、C(組み合わせ)を使います。9人から3人選ぶ組み合わせなので\({}_9C_3\)です。
それに対して、Bのグループに入る人は、残り6人から3人選ぶ\({}_6C_3\)です。
最後、Cのグループに入る人は、残り3人から3人選ぶ\({}_3C_3=1\)です。「残りは全員Cに入るので1パターン」と思ってもらってもよいです。
つまり、\({}_9C_3\times{}_6C_3\times{}_3C_3=1680\)(通り)になります。ここまでは大丈夫でしょうか?
さすがに組み合わせの計算には慣れてきたぞ。
(2)の解答
(2)は(1)と「A、B、Cの区別がない」という点が異なります。
9人を1〜9という数字で表現すると、例えば(1,2,3)、(4,5,6)、(7,8,9)という組み合わせは、(1)では
A | B | C |
(1,2,3) | (4,5,6) | (7,8,9) |
(1,2,3) | (7,8,9) | (4,5,6) |
(4,5,6) | (1,2,3) | (7,8,9) |
(4,5,6) | (7,8,9) | (1,2,3) |
(7,8,9) | (1,2,3) | (4,5,6) |
(7,8,9) | (4,5,6) | (1,2,3) |
の6パターンあり、これらは区別してカウントされています。
しかし、(2)ではこれらを1つのものと見なします。
ではこの「6」はどこからきたのか?「組み合わせ」「同じものを含む順列」を階乗で割る操作を理解していたらわかりますね。
3つの組((1,2,3)、(4,5,6)、(7,8,9))を並べる並べ方、なので\(3!=6\)通りとなります。
(1)で計算したすべての組に対して、同じと見なせるものが6通りずつある、ということですね。
ということで、(2)の答えは
\({}_9C_3\times{}_6C_3\times{}_3C_3\div3!=280\)(通り)
となります。
(3)の解答
ふっふっふ…。(3)も(2)と一緒でグループ名がないな。
じゃあ、\({}_9C_2\times{}_7C_3\times{}_4C_4\div3!\)だ!カンペキ!
違います。
なぜだぁ…。
そろそろお決まりパターンになってきたわね。
例えば、(1,2)、(3,4,5)、(6,7,8,9)と分けたと考えましょう。
グループの名前がついていないとはいえ、(1,2)と(3,4,5)と(6,7,8,9)はお互いに同じと見なせるでしょうか?さすがに人数が違うので無理です。
このように、グループ名がついていなくても人数が違えば自然と区別がつくケースもあります。
ということで、この問題の答えは
\({}_9C_2\times{}_7C_3\times{}_4C_4=1260\)(通り)
となります。
組み分けでも、一旦違うグループとして選ぶんだな。そのグループが同じと見なすことができたら、その並び方で割ってやる。区別がつくなら割る必要はない、ということだな。
他にどんなときに使うの?
他には、以下のような問題で同じ考え方を使います。
- 最短経路問題(碁盤の目状の道の最短経路のパターン数を数える)
- 反復試行の確率(普通はCを使いますが、階乗を使った計算でも代用可)
- 二項定理
- 多項定理
このように、同じと見なせるものを階乗で割るという操作は汎用性が高いです。
また、上記の「組み分けの問題」のように区別がつくのか?つかないのか?を意識しなければならない問題もあるので、しっかりと階乗で割る理由を理解しておきましょう。
まとめ
「組み合わせ」や「同じものを含む順列」を階乗で割る理由を説明しました。ポイントは、
「一旦順番をつけて並べる並び方を考える」→「同じと見なせるものの並び方で割ることで1つにまとめている」
という点です。
長文になってしまいましたが、何度か読み返して意味を理解することをオススメします。
汎用性の高い考え方なので、ぜひマスターしてください。
また、こちらの記事でも、つまづきやすいPやC、!(階乗)の使い方や意味を説明していますのでチェックしてみてください!