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三角関数の積和・和積公式【覚える必要があるか?も説明】
三角関数の基本を一通り教わった後に習ったり…習わなかったりする、
三角関数の積和・和積公式。
…まだ、覚えなきゃならんのか。ボクのライフはもう0です…。
三角関数の中でも、かなり応用の問題にならないと正直必要のない積和・和積公式。
ですが逆に言うと、数学のレベルを上げたい人や数学Ⅲの積分では必須レベルの公式です。
この記事では三角関数の積和・和積公式の必要性や覚え方の説明をしていきます。
三角関数の積和・和積公式とは?
(三角関数の授業終わり…。)
…以上で三角関数の基本的な授業は終わりです。
(ようやく三角関数の暗記地獄が終わった…。正直、半角の公式あたりからもう限界ザンス…。)
じゃあ、次は応用ね。三角関数の積和・和積の公式、といわれる次の8つの公式を覚えてくださーい。
げふぁあ!!(吐血)
ということで、三角関数の積和・和積公式です。
この公式…8個もあります。
三角関数の積和公式
・\(\displaystyle \sin{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha + \beta)} + \sin{(\alpha – \beta)} \} \)
・\(\displaystyle \cos{\alpha}\sin{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha + \beta)} – \sin{(\alpha – \beta)} \} \)
・\(\displaystyle \cos{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \cos{(\alpha + \beta)} + \cos{(\alpha – \beta)} \} \)
・\(\displaystyle \sin{\alpha}\sin{\beta} = -\frac{1}{2} \{ \cos{(\alpha + \beta)} – \cos{(\alpha – \beta)} \} \)
三角関数の和積公式
・\(\displaystyle \sin{A} + \sin{B} = 2 \sin{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}}\)
・\(\displaystyle \sin{A} – \sin{B} = 2 \cos{\frac{A+B}{2}} \sin{\frac{A-B}{2}}\)
・\(\displaystyle \cos{A} + \cos{B} = 2 \cos{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}}\)
・\(\displaystyle \cos{A} – \cos{B} = -2 \sin{\frac{A+B}{2}} \sin{\frac{A-B}{2}}\)
証明はコチラ
積和・和積の公式は加法定理から導きます。
加法定理を順番に書き出すことが重要です。
加法定理
- \( \sin{(\alpha + \beta)} = \sin{\alpha} \cos{\beta} + \cos{\alpha} \sin{\beta} \)…①
- \( \sin{(\alpha – \beta)} = \sin{\alpha} \cos{\beta} – \cos{\alpha} \sin{\beta} \)…②
- \( \cos{(\alpha + \beta)} = \cos{\alpha} \cos{\beta} – \sin{\alpha} \sin{\beta} \)…③
- \( \cos{(\alpha – \beta)} = \cos{\alpha} \cos{\beta} + \sin{\alpha} \sin{\beta} \)…④
このあと説明しますが、①と②の組み合わせを足すor引く、③と④の組み合わせを足すor引くことで証明します。
(積和公式の証明・一番最初だけ)
①+②
\(\displaystyle \sin{(\alpha + \beta)} + \sin{(\alpha – \beta)} = 2\sin{\alpha}\cos{\beta} \)
よって、\(\displaystyle \sin{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha + \beta)} + \sin{(\alpha – \beta)} \} \)(終)
同様に、①ー②で2つ目の式が、③+④で3つ目の式が、③ー④で4つ目の式が得られます。
ちなみに、4つ目の式のー(マイナス)を中に掛け入れたりしてはいけません。理由はあとで述べます。
(和積公式の証明・一番最初だけ)
①+②
\(\displaystyle \sin{(\alpha + \beta)} + \sin{(\alpha – \beta)} = 2\sin{\alpha}\cos{\beta} \)
ここで、\( \alpha + \beta = A\)、\( \alpha – \beta = B\)とし、この2式を使って\( \alpha = \cdots\)、\( \beta = \cdots\)の形に変形すると、
\(\displaystyle \alpha = \frac{A+B}{2}\)
\(\displaystyle \beta = \frac{A-B}{2}\)
よって、\(\displaystyle \sin{A} + \sin{B} = 2 \sin{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}}\)(終)
同様に、①ー②の\(\alpha\)、\(\beta\)を置き換えると2つ目の式が、③+④で3つ目の式が、③ー④で4つ目の式が得られます。
三角関数の積和・和積公式は覚えなくちゃダメ?
せんせい…この上、8個も公式を覚えるのはムリです…。三角関数に入ってから覚えることが多すぎでゴザル…。
ショックで語尾がおかしくなってますよ?まぁ…これも実はコツがあるんですけどね。
コツ!?早く、テルミー、コツ!!
これまた個人的な意見になりますが…やっぱりこれも私は覚えてません。もうね…覚えるのとにかく苦手なんですよ…。
ですが、当然和積・積和は使えますし、まるっきり覚えていないわけでもありません。
「最小限の暗記」+「加法定理をイメージ」して作ります。
ということで、和積・積和を作るコツを教えます。
「私はいつもこうやって作っている」という話なので、「別にそんくらい覚えられるワイ!」という人は、最後にある練習問題だけでもやってみてください。
「覚えられん…」という人はぜひ参考にしてください!
ポイントは
- sinの加法定理、cosの加法定理のペアを「足す」or「引く」の操作で作る。
- 積和の\( \alpha + \beta \)と\( \alpha – \beta \)、和積の\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\)と\(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)の形を覚えておく。
の2点です。
そして、最大の注意点は公式の順番を必ず守る、ということです。
こちらの記事で説明していますが、加法定理の順番を守って覚えて使うことと、
\( \alpha + \beta \) → \( \alpha – \beta \)、
\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\) → \(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)
の角の順番を押さえておくことが重要です。+(プラス)→ー(マイナス)の順なので、順番を覚えるのはそんなに難しくないはずです。
なぜ順番を重視するかというと、このあと角の形抜きで加法定理を使って作るからです!
…?
どういうことかというと、加法定理を、順番に角度なしでsin、cosの頭文字「s」「c」だけ使って表現します。
- \( s = sc + cs\)…①
- \(s = sc – cs\)…②
- \(c = cc – ss\)…③
- \(c = cc + ss\)…④
そして、積和も和積も「①、②のペアを足し引き」するか「③、④のペアを足し引き」するか、で作ります。
あとは欲しい情報に合わせてどの組み合わせを足すのか、引くのか考えるだけです。
では具体的にやってみましょう。
例1.\( \sin{75°} \cos{15°}\)を和の形にしたい(積和)。
(考え方)
「①+②」「①ー②」「③+④」「③ー④」のどれでsin×cosが出てくるか考えます。
積和は、加法定理の右辺にある掛け算を基準に考えると判断しやすいです。
sin×cosが出てくるのは「①+②」ですね。
①+②
\( s + s = 2sc\)
という若干意味不明な式が出てきますが、積和は積→和の形に直すのでもう少し変形します。
\(\displaystyle \frac{1}{2}( s + s) = sc\)
\(\displaystyle sc = \frac{1}{2}( s + s) \)
これで完了です!あとは、覚えている角の順番、
\( \alpha + \beta \) → \( \alpha – \beta \)
を適用してやればおしまいです。つまり、この略した式にこの順番で角を吹き込んでやります。
\(\displaystyle sc = \frac{1}{2}( s + s) \)
→\(\displaystyle \sin{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \sin{(\alpha + \beta)} + \sin{(\alpha – \beta)} \} \)
積和でも和積でも左辺は基準となる角なので、それぞれ一文字ですね。右辺に覚えている形の角を入れ込んでいきます。
よって、
\(\displaystyle \sin{75°} \cos{15°} = \frac{1}{2} \{ \sin{(75° + 15°)} + \sin{(75° – 15°)} \} \)
\(\displaystyle \quad = \frac{1}{2} ( \sin{90°}+ \sin{60°} ) \)
\(\displaystyle \quad = \frac{1}{2} ( 1 + \frac{\sqrt{3}}{2}) = \frac{2 + \sqrt{3}}{4} \)…(答)
例2.\( \cos{75°} + \cos{15°}\)を積の形に直したい(和積)。
(考え方)
和積は作るのが簡単です。積和も和積も加法定理を足し引きしたときの左辺が「和」、右辺が「積」になるので、和積は判断がしやすいです。
今回はcos + cosなので「③+④」ですね。
③+④
\(c + c = 2cc\)
これに覚えている角の順番、
\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\) → \(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)
で、この式に角を吹き込んでやると、
\(\displaystyle \cos{A} + \cos{B} = 2 \cos{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}}\)
となります。
最初は略した加法定理をメモ書きみたいに書く方がやりやすいですが、慣れればアタマの中でできるようになりますよ!
よって、
\(\displaystyle \cos{75°} + \cos{15°} = 2 \cos{\frac{75°+15°}{2}} \cos{\frac{75°-15°}{2}}\)
\(\displaystyle \quad = 2 \cos{45°} \cos{30°} = \frac{\sqrt{6}}{2}\)…(答)
最後に補足…というか繰り返しになりますが、順番がかなり重要です。
なぜなら順番を守らないと、
\( \alpha + \beta \) → \( \alpha – \beta \)、
\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\) → \(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)
のポイントになる角の入れ込みの順番が崩れるからです。
先ほど、公式の証明の中で説明しましたが、積和の最後の公式でー(マイナス)をかけ入れて整理しないのは、この順番を守った結果なんですね。
三角関数の積和・和積公式はどんなときに使える?
積和や和積の公式は、結構難易度の高い問題でないと使いませんが、一例を挙げておきます。
逆に言うと、ある程度難しい数学の問題にチャレンジしたい人は使えるようにしておきたいですね!
方程式などを解く
例3.\(\displaystyle 0 < x < \frac{\pi}{2}\)とする。\(x\)の方程式\( \sin{5x} + \sin{3x} = 0\)を解け。
\(\sin{3x}\)を3倍角でバラすのはギリギリいけますが、\(\sin{5x}\)はバラすのは大変です…。
なので、和積で式をまとめていきます!
「①+②」→\(s + s = 2sc\)→これに\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\)、\(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)を入れる。
\(\displaystyle \sin{A} + \sin{B} = 2 \sin{\frac{A+B}{2}} \cos{\frac{A-B}{2}}\)
(解答)
\( \sin{5x} + \sin{3x} = 0\)
\(\displaystyle 2 \sin{\frac{5x+3x}{2}} \cos{\frac{5x-3x}{2}} = 0 \)
\( 2 \sin{4x} \cos{x} = 0 \)
\(\displaystyle 0 < x < \frac{\pi}{2}\)より\(\cos{x} \neq 0\)
よって、\(\sin{4x} = 0\)
\(\displaystyle 0 < x < \frac{\pi}{2}\)より、\(\displaystyle 0 < 4x < 2\pi \)
ゆえに、\( 4x = \pi\)より\(\displaystyle x = \frac{\pi}{4} \)…(答)
積分
数学Ⅲの積分では積和の公式を使うことがあります。
忘れがちですけど重要な変形です。積分計算は掛け算の形が苦手なので、積→和の形に直す積和公式がポイントになる問題があります。
例4.\(\displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2} \cos{4x}\cos{3x} dx\)の計算をせよ。
積和の公式を確認します。cos×cosがほしいので「③+④」ですね。
「③+④」→\(c + c = 2cc \)つまり、\( cc = \frac{1}{2}(c + c)\)→これに\( \alpha + \beta \)、\( \alpha – \beta \)を入れる。
\(\displaystyle \cos{\alpha}\cos{\beta} = \frac{1}{2} \{ \cos{(\alpha + \beta)} + \cos{(\alpha – \beta)} \} \)
(解答)
\(\displaystyle \int_0^\frac{\pi}{2} \cos{4x}\cos{3x} dx=\int_0^\frac{\pi}{2} \frac{1}{2}(\cos{7x}+\cos{x}) dx\)
\(\displaystyle\quad = \frac{1}{2} \Big[ \frac{1}{7}\sin{7x}+\sin{x} \Big]_0^\frac{\pi}{2} \)
\(\displaystyle\quad = \frac{1}{2} \Big( -\frac{1}{7}+1 \Big) = \frac{3}{7} \)…(答)
積和・和積公式を使った練習問題
練習問題を2問用意しました。ぜひチャレンジしてみてください!
問.\( \cos{40°}\cos{80°}\cos{160°} \)の値を求めよ。
答え
\( \displaystyle -\frac{1}{8} \)
問.次の等式が成り立つことを示せ。
(1) \( \sin{250°} + \sin{130°} + \sin{10°} = 0 \)
(2) \( \cos{250°} + \cos{130°} + \cos{10°} = 0 \)
答え
(1) 省略。
(2) 省略。
練習問題の模範解答も販売中!
1分野200円なので、解答が欲しい分野だけ格安で購入できます!!
別解や思考方法、注意点、補足説明など、note記事だからできる、他にはなかなか無い模範解答に仕上がっています。
三角関数の積和・和積公式のまとめ
三角関数の積和・和積公式のまとめでした。
覚えられる人は覚えてもいいですが、作ることをオススメします。
- sinの加法定理、cosの加法定理のペアを「足す」or「引く」の操作で作る。
- 積和の\( \alpha + \beta \)と\( \alpha – \beta \)、和積の\(\displaystyle \frac{A+B}{2}\)と\(\displaystyle \frac{A-B}{2}\)の形を覚えておく。
この2点を押さえておけばすぐに作れますので、参考にしてみてください。