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平均の種類・求め方、いくつ知ってる?
平均、と聞いたら、皆さん何を思い浮かべますか?
ちなみに、どうでもいいですが令和3年の統計によると、サラリーマン(男性)の平均年収は約546万円らしいですよ。
この平均を見たとき「高い!」と思いますか?それとも「まぁ、それなりだな」と思いますか?
これがよく言われる平均のマジックですね。恐らく、大体の人が「いや…そんなに貰ってない」と思うでしょう。
これは一部の給料の高い人によって平均が釣り上げられているからですね。こういう、一般的でない値を「外れ値」といいますが、平均はこの外れ値の影響を受けやすいんです。統計の話になりますが。
話が逸れましたが、皆さん、この平均は色々な種類があるのを知っていますか?
この記事では「色々な平均」について話をしていきます。
どんな「平均」が適切?
問題です。
はい(いきなりかよ…)。どうぞ。
次の3パターンについて、「平均」を計算してください。
はーい(なんだ、平均の計算か、別に難しくないわ)。
- 数学のテストの平均。Aさん80点、Bさん70点、Cさん30点、の平均は何点?
- テストの点の伸び率。前回比で考えています。
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
点数 | 100点 | 75点 | 61点 | 73点 |
伸び率 | 75%(0.75倍) | 81%(0.81倍) | 120%(1.2倍) |
伸び率の平均は何%?(計算しやすいように端数は四捨五入しています)
- 速度の平均。競技場のトラックを、1周目は3km/h、2周目は4km/h、3周目は6km/hで歩いたときの平均速度は何km/h?
ただの平均の計算でしょ?全然難しくないじゃないですか。
普通の平均「相加平均」
はい、じゃあ最初の「数学のテストの平均」は?
\( (80 + 70 + 30) \div 3 = 60\)だから平均60点です。
正解です。いわゆる普通の平均ですね。算術平均とか相加平均とか言ったりもします。
「全部足して、その足した数で割る」という計算方法です。特に難しいことはないと思います。
\( a_1 , a_2 \cdots, a_n \)のn個のモノの相加平均は、
\( \displaystyle \frac{1}{n}(a_1 + a_2 + \cdots + a_n) \) で計算できます。
割合の平均「相乗平均」
はい、じゃあ「テストの点の伸び率」は?
\( ( 75 + 81 + 120) \div 3 = 92\)だから92%ですね。
はい、ぶー!ざんねーん、ちがいまーす!ぜんぜんちがいますねぇ。
なぜじゃあ…。ていうか、そこまで言わなくてよくね?
え?と思った人もいると思いますが、こういうときの平均の出し方はちょっと違うんですね。
得点の推移を追っていくと、100点→75点→61点→73点になっていますが、「最初の100点から最後の73点を、伸び率を使って計算」しようとすると、以下のようになります。
\( 100 \times 0.75\times 0.81\times 1.2 =72.9 \)
※1 今回は話を簡単にするために四捨五入して73点、とします。
※2 ちなみに伸び率を掛ければ次の点数になります。例えば2回目から3回目の点を出すには2回目の点数75点に伸び率81%、つまり0.81を掛けて、\( 75 \times 0.81 = 60.75(61点) \)とすれば計算できます。なので、上記のようにどんどん伸び率を掛ける計算になります。
伸び率の平均が92%ということは、平均の意味からすると、最初の100点に0.92を3回かけたら73点になるはずですよね?
まぁ、そうですね。平均ですから、今回の場合それを3回掛けたら、最後の点と同じ値にならないとおかしくないですか?
それでは実際に計算してみましょう。
\( 100 \times 0.92\times 0.92\times 0.92 =77.8 \)
…アレ?
はい、ざんねーん!
なぜじゃあ…
このように、普通に平均(相加平均)をとってしまうと平均の意味からずれた値がとれてしまいます。
これは、前の値に割合を掛けて次の点数を計算しているからですね。こういった感じで、掛けていくモノの平均を足して出す、というのは違和感を感じませんか?
こういうときには相乗平均(幾何平均)という方法で平均を計算します。
相乗平均?
n個のモノを掛けてn乗根をとる、というものですね。
\( a_1 , a_2 \cdots, a_n \)のn個のモノの相乗平均は、
\( \sqrt[n]{a_1 \cdot a_2 \cdot \cdots \cdot a_n} \) で計算できます。ただし\( a_1 , a_2 \cdots a_n \)は全て0以上の値とします。
\( \sqrt[n]{\quad} \)はn乗根、と言われるもので高校での数学II「指数関数・対数関数」で習います。
特に2個のモノ\(a, b( a \geq 0 , b \geq 0 ) \)の相乗平均は\( \sqrt{ab} \)で計算できます。
今回のようなどんどん掛けていって値を出すときに「平均どれだけ掛ければOKか?」みたいにを計算するときは相乗平均で求めます。
\( \sqrt[3]{ 0.75 \cdot 0.81 \cdot 1.2 } = 0.9\)
ということで、平均伸び率は0.9つまり90%ですね。
えー…本当ですかぁ?
では、先ほどと同様に計算してみましょう。
\( 100 \times 0.9\times 0.9\times 0.9 =72.9 \)
…
それみたことか。
前回比のように、何かを掛けて次の値を出すような場合「平均どれだけ掛ければよいか?」は相乗平均を使う、と思っておいてください。
平均の平均「調和平均」
さて、じゃあ最後「速度の平均」は?
\( ( 3 + 4 + 6) \div 3 = 4.3333 \cdots \)だから、4.3333…km/h、と言いたいところですけど、違うんでしょうね…。
はい、ぶー!ざんねーん、ちがいまーす!ぜんっっぜん、ちがいますねぇ。
…。
では、実際にどのように計算をすべきかというと、「トータルの距離」「トータルの時間」で平均速度を計算する、という方法が妥当でしょう。
トラック1周が何kmかわからないので、仮に\(a\)(km)とします。
小学生のときに速さの勉強したときに覚えた「き・は・じ」(「み・は・じ」とか色々な言い方で習ったと思います。距離・速さ・時間を計算するアレです。)で時間を計算すると、
1周目は\( \displaystyle \frac{a}{3} \)(h)、2周目は\( \displaystyle \frac{a}{4} \)(h)、3周目は\( \displaystyle \frac{a}{6} \)(h)です。
距離は3周トータルで\(a+a+a\)ですよね。
なので、平均の速さを計算すると、
\( \displaystyle \frac{a+a+a}{\frac{a}{3}+\frac{a}{4}+\frac{a}{6}} = \frac{1+1+1}{\frac{1}{3}+\frac{1}{4}+\frac{1}{6}} \)(←分母分子を\(a\)で割りました。)
\( \displaystyle = \frac{3}{\frac{4+3+2}{12}} = \frac{3}{\frac{9}{12}} = 4 \)
ということで平均時速は4km/hです。
まぁ、確かに言われてみればそうやって計算するのが妥当かな、と思いますけど…。
このように、一定距離で速度が変わったときに平均を取る場合、調和平均、というもので計算します。上記の計算方法がまさに調和平均です。
先ほどは一定距離(トラックの長さ)を\(a\)と置きましたが、結局計算の1行目で分母分子を\(a\)で割って消しています。
ということで、より一般的にまとめると、調和平均は次のように計算します。
\( a_1 , a_2 \cdots, a_n \)のn個のモノの調和平均は、
\( \displaystyle \frac{n}{\frac{1}{a_1} + \frac{1}{a_2} +\cdots + \frac{1}{a_n}} \) で計算できます。
\( \displaystyle \frac{1}{\frac{1}{n}(\frac{1}{a_1} + \frac{1}{a_2} +\cdots \frac{1}{a_n} ) } \)とすれば、
逆数の平均、の逆数、とも捉えることができます。
先ほどの計算も、いきなり「一定距離の速度の平均は調和平均だ!」ということで、
\( \displaystyle \frac{3}{\frac{1}{3} + \frac{1}{4} +\frac{1}{6}} \) という計算をしてもOKです。
んー…。
お、納得いかない様子ですね。
なんかこう、使い分け、というか…。ぶっちゃけなんで普通の平均(相加平均)をとったらダメなのか、調和平均を取るべきなのかわかりません…。
確かに、どういうときに相加平均なのか?相乗平均なのか?調和平均なのか?がわからないと、他のときに間違えちゃいますね。
では、次はその使い分けについて説明しましょう。
相加平均・相乗平均・調和平均の使い分け
どういうときに相加平均なのか、相乗平均なのか、調和平均なのか、を使い分けるために、それぞれの変数のイメージを図にしておきます。
大体の場合は相加平均(普通の平均)で大丈夫だ、というのがわかると思いますが、以下のケースでは注意が必要です。
- 成長率、増加率など、前の値に何かを掛けて次の値を出すモノの平均→相乗平均
- 一定距離における速度の平均、定額投資など、一定の値を何かで割っているモノの平均→調和平均
おまけ「相加・相乗・調和平均の大小関係」
一般的に、同じ変数\( a_1 , a_2 \cdots, a_n \)を使ったときの相加・相乗・調和平均の大小関係は次のようになります。
(相加平均)\( \geq \) (相乗平均)\( \geq \) (調和平均)
なぜこうなるのか、については結構色々な話ができるので、こちらをご覧ください。
まとめ
一口に「平均」と言っても色々な種類があるのがわかったと思います。
相乗平均、調和平均についてはあまり聞き慣れないかもしれませんが、知っておかないと間違いやすいかな、と思います。
速さの平均なんかは、普通の平均(相加平均)をとってしまいそうですもんね。
調和平均に関しては、実用的な例もありますので、こちらも参考にしてください。