ヤコビアンによる重積分の変数変換を図と例題でわかりやすく!

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重積分の変数変換(置換)について説明しますが、まずは1変数の積分の変数変換について押さえておくと理解しやすいと思います。

この記事の\(g'(t)\)の意味のところですね。ここの感覚がわかっていると、重積分の変数変換も理解しやすいです。

この記事では重積分の変数変換、特にヤコビアンについて詳しく説明していきます。

目次

重積分の変数変換

せんせ

まずは重積分の変数変換の式を押さえますが、具体例を見た方が理解しやすいです!

重積分の変数変換

\(\displaystyle \int\!\!\int_D f(x,y)dxdy\)について

\(x=g(u,v)\)、\(y=h(u,v)\)とおくと、

\(\displaystyle \int\!\!\int_D f(x,y)dxdy=\int\!\!\int_{D’} f(g(u,v),h(u,v)||J||dudv\)

ただし、\(D’\)は\(u\)、\(v\)の範囲が作る領域、\(||J||\)はヤコビアンと呼ばれる値で、

\(\displaystyle ||J||= | \frac{\partial x}{\partial u}\frac{\partial y}{\partial v} – \frac{\partial x}{\partial v}\frac{\partial y}{\partial u} |\)

で計算できる。

ヤコビアンは行列\(\begin{pmatrix} \frac{\partial g}{\partial u} & \frac{\partial g}{\partial v} \\ \frac{\partial h}{\partial u} & \frac{\partial h}{\partial v} \end{pmatrix} \)の行列式に絶対値をつけたものです。ちなみに、この行列のことをヤコビ行列といいます。

たろぅ

行列?行列式とは?

という方はこちらの記事をご覧下さい。

行列式を理解しなくても、偏微分(\(\displaystyle \frac{\partial x}{\partial u}\)は「\(x=g(u,v)\)の\(v\)を定数として変数\(u\)で微分する。」の意味。他も同様。)の計算方法さえわかれば計算はできます。

ただ、行列と行列式の意味を押さえておいた方がヤコビアンのイメージが理解しやすいかな、と思います。

せんせ

変数の置き換え方、領域の置き換え方については問題ないと思います。ここでは、ヤコビアンの意味について説明していきます。

そもそも\(dxdy\)は面積要素と言われるもので、重積分は領域に関して積分する計算です。

その面積要素を補正するものがヤコビアンだと思ってください。

ここで、2変数関数\(z=f(x,y)\)の全微分は次のように計算されます。

\(\displaystyle dz = \frac{\partial f}{\partial x} dx + \frac{\partial f}{\partial y} dy\)

つまり、今回の話では\(x = g(u, v) \)とおくと、その全微分は、

\(\displaystyle dx = \frac{\partial g}{\partial u} du + \frac{\partial g}{\partial v} dv \)…①

となります。\(y=h(u, v)\)についても同様に、

\(\displaystyle dy = \frac{\partial h}{\partial u} du + \frac{\partial h}{\partial v} dv \)…②

となります。

せんせ

ここで行列の出番です!

行列の積を使えば、①、②の式は

\(\begin{pmatrix} \frac{\partial g}{\partial u} & \frac{\partial g}{\partial v} \\ \frac{\partial h}{\partial u} & \frac{\partial h}{\partial v} \end{pmatrix} \begin{pmatrix} du \\ dv \end{pmatrix} =\begin{pmatrix} dx \\ dy \end{pmatrix} \)

とまとめることができます。ここで、こちらの記事でも説明していますが、行列は、ベクトルに掛けるとベクトル変換を表し、その行列式は拡大倍率を表します

ヤコビアン

元の話は\(x\)、\(y\)を\(u\)、\(v\)に置き換えているので、この行列の計算では一見逆方向に変換しているように見えます。

ですが、今やりたいことは「\(dudv\)をどのように補正したら\(dxdy\)になるか?」ですので、この補正分のヤコビアンを掛けることで\(dxdy\)を\(dudv\)で上手く表現できることになります。

この、置換積分の補正の感覚については、こちらでも説明していますので、合わせて見ていただけると嬉しいです。

この記事の\(g'(t)\)の役割がヤコビアンなんですね。

せんせ

置換積分の補正の感覚と行列の変換の感覚が上手く結びつく、というのは面白いですね!!

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ド定番!ヤコビアンで極座標に変換!

これはどこのサイトでも解説しているのですが、\(x\)、\(y\)を極座標(変数\(r\)、\(\theta\))に変換してみます。

せんせ

例題を考えてみましょう!

例.領域\(D=\{ x^2 + y^2 \leq 1 \} \)における\(f(x,y) = e^{-x^2-y^2}\)の重積分を求めよ。

この関数、「\(-x^2-y^2=-(x^2+y^2)\)」が見えるので、極座標で考えたくなります。

せんせ

\(x^2+y^2\)は(円の半径)\(^2\)を表すので、半径\(r\)と偏角\(\theta\)を使う方がキレイに計算できそうです!
極座標変換におけるヤコビアン計算は定番なので、一度ヤコビアンだけ考察してみましょう!

まずは変数を置き換えます。

極座標表示なので、\(x=r\cos{\theta}\)、\(y=r\sin{\theta}\)と置きます。

ここで、\(x\)、\(y\)をそれぞれ\(r\)、\(\theta\)で偏微分すると、

\(\displaystyle \frac{\partial x}{\partial r} = \cos{\theta}\)

\(\displaystyle \frac{\partial x}{\partial \theta} = -r\sin{\theta}\)

\(\displaystyle \frac{\partial y}{\partial r} = \sin{\theta}\)

\(\displaystyle \frac{\partial y}{\partial \theta} = r\cos{\theta}\)

となります。なので、ヤコビ行列\(J\)とヤコビアン\(||J||\)は、それぞれ

\( J = \begin{pmatrix} \cos{\theta} & -r\sin{\theta} \\ \sin{\theta} & r\cos{\theta} \end{pmatrix}\)

\(||J|| = | \cos{\theta}\cdot r\cos{\theta} – ( -r\sin{\theta})\cdot \sin{\theta}| = |r(\cos^2{\theta}+\sin^2{\theta})|\)

\( \quad = r\)

となります。ちなみに、極座標における\(r\)は、普通は一意性を保つために\(r \geq 0\)で定義します(\(r<0\)まで認めちゃうと、各点(\(x\),\(y\))をいろんなパターンで表せてしまいます。同様に\(\theta\)についても普通は\(0 \leq \theta < 2\pi\)で定義します)。

つまり、極座標変換をしたときのヤコビアンは\(||J|| = r\)となります

せんせ

このヤコビアンは結構定番ですね!
では、最後まで例題を解いていきましょう。

(解答)

\(x=r\cos{\theta}\)、\(y=r\sin{\theta}\)とすると、

領域\(D=\{ x^2 + y^2 \leq 1 \} \)は、

領域\(D’=\{ 0 \leq r \leq 1, 0 \leq \theta \leq 2\pi \} \)と変換される。

ヤコビアンは\(||J|| = r\)なので、

\(\displaystyle \int \!\!\! \int_D e^{-x^2-y^2}dxdy\)

\(\displaystyle \quad = \int_0^{2\pi} \!\!\! \int_0^1 e^{-r^2}rdrd\theta\)

\(\displaystyle \quad = \int_0^{2\pi} \!\!\! \left[-\frac{1}{2}e^{-r^2} \right]_0^1 d\theta\)

\(\displaystyle \quad = \frac{1}{2}\int_0^{2\pi}(1-e^{-1}) d\theta\)

\(\displaystyle \quad = \frac{1}{2}\left[(1-e^{-1})\theta \right]_0^{2\pi} = \pi (1-e^{-1}) \)…(答)

せんせ

この変数変換はガウス積分という有名な積分計算にも使われます!ガウス積分は統計にも出てくる重要な計算結果です。

まとめ

重積分の変数変換の解説でした。

ヤコビアン、という行列式まで持ち出して変数変換をしないといけないのは大変ですが、その意味がわかってくると、色々な知識と結びついてくるので面白いです。

ぜひ、一つずつじっくりと勉強してみてください。

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