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自然対数の底e(ネイピア数)とは?意外と身近な無理数
自然対数の底\(e\)…「数学B 確率統計」、「数学III 微分」の分野で「こういう値がありますよ」と紹介される超越数(無理数の中でも代数方程式の解にならない数)です。
特に「数学B 確率統計」では、正規分布が出てきたときに、
「\(e\)は自然対数の底といわれる無理数で、\(e =2.718281828 \cdots\)」
とイキナリ紹介されていて、
(?)
となる人もいるかと思います。
自然対数の底\(e\)(ネイピア数)は円周率\(\pi\)などに比べると、意味がちょっとわかりにくい超越数です。
そんな不思議な自然対数の底\(e\)について色々と掘り下げていきましょう!
意外と身近にあったりする自然対数の底e
いやいや、絶対1回は当たるって。
んー…意外と当たらない気がするけど…。
ん?どうかしました?
いや、ここに\(\displaystyle \frac{1}{10}\)で当たるクジがある(何回引いても当たる確率は\(\displaystyle \frac{1}{10}\)、何度でも当たる)んですけど、これ、10回引いたら1回は当たりますよね?
いやぁ…結構当たらない気がするんだけど…。
だって、ここで勉強したけど、期待値は\(10 \times \displaystyle \frac{1}{10}=1\)じゃない。絶対1回は当たるって。よし、10回クジ引くぞ!
ちなみに何か景品でもあるんですか?
1000円相当のガチャガチャが当たるんですよ!1回クジ引くのに100円かかりますけど!
(普通にガチャガチャやった方がいいんじゃないか?)
まぁ今回のクジ、早めに当たれば、また何回か当たれば得をしますけどね…。
さて、ではこのクジ、たろうくんが10回引いたとき全く当たらない確率を求めてみましょう。
え…やる前から、そんな不吉な…。
1回のクジで当たらない確率は\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{10} \right)\)です。
これが10回続くので、\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{10} \right)^{10}\)となります。
これをこちらの関数電卓(外部リンクです)で計算すると、\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{10} \right)^{10}=0.3486\cdots\)になります。
あれ?意外と高い?何も当たらない確率ってこんなに高くなるの?
期待値、というのは平均のことですからね。今回のクジは最悪全く当たらないこともあるし、運が良ければ10回当たることもあるわけです。期待値はその平均をとった値ですから、「期待値(=平均)1」だからといって「少なくとも1回当たるかどうか?」とは別の話です。
これと同じことをもう少し大きな数でやってみます。
つまり、「\(\displaystyle \frac{1}{100}\)で当たるクジを100回」「\(\displaystyle \frac{1}{1000}\)で当たるクジを1000回」…と、当たる確率を下げて、その分引く回数を増やす、という計算をしてみます。
先ほどの関数電卓を使って計算すると、
\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{100} \right)^{100}=0.3660\cdots\)
\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{1000} \right)^{1000}=0.3676\cdots\)
\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{10000} \right)^{10000}=0.3678\cdots\)
\(\displaystyle \left(1-\frac{1}{100000} \right)^{100000}=0.3678\cdots\)
と、ある値に近づいているように見えます。
結論をいうと、この値は\(\displaystyle \frac{1}{e}\)に近づいていきます。
確率・統計ではちょっとしたところに自然対数の底\(e\)が出てきます。
「ものすごく大きいサンプル数」とか「ものすごく短い時間で起きる確率」なんかは極限とも結びつきやすいです。
自然対数の底eの定義
極限による自然対数の底eの定義
自然対数の底\(e\)の定義は、微分の基本のところで話をした極限を使って定義されます。
自然対数の底\(e\)の定義
\(n\)を自然数とすると、
\(\displaystyle e = \lim_{n \to \infty} \left( 1+\frac{1}{n} \right)^n \)
\(n \rightarrow -\infty\)でも成り立ちます。
\(\displaystyle e = \lim_{n \to -\infty} \left( 1+\frac{1}{n} \right)^n \)
自然数\(n\)でなくても、実数\(x\)について同様に成り立ちます。
\(\displaystyle e = \lim_{x \to \infty} \left( 1+\frac{1}{x} \right)^x \)
\(\displaystyle \frac{1}{n} = x\)とおけば、\(\displaystyle n=\frac{1}{x}\)、\(x \rightarrow 0\)となるので、
\(\displaystyle e = \lim_{x \to 0} ( 1+x )^\frac{1}{x} \)
も成り立ちます。
関数電卓を使って計算して\(n\)を大きくしていくと、\(e =2.718281828 \cdots\)に近づいていくことが確認できます。
微分による自然対数の底eによる定義
「微分しても形が変わらない指数関数\(f(x)=a^x\)」を考え、このときの指数関数の底を\(e\)と定める、というスタンスでも自然対数の底\(e\)を定義することができます。
\(f(x)=a^x\)を定義に従って微分すると、(微分の定義はこちら)
\(\displaystyle f’(x)=\lim_{h \to 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h} = \lim_{h \to 0} \frac{a^{x+h}-a^x}{h}\)
\(\displaystyle \quad = \lim_{h \to 0} \frac{a^x \cdot a^h-a^x}{h}= a^x\lim_{h \to 0} \frac{a^h-1}{h}\)
これが\(a^x\)になればいいので、
\(\displaystyle a^x\lim_{h \to 0} \frac{a^h-1}{h}=a^x\)
つまり、\(\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{a^h-1}{h}=1\)となるような底\(a\)を\(e\)と定めよう、ということです。
\(\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{e^h-1}{h}=1\)
微分による自然対数の底\(e\)の定義
\(\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{e^h-1}{h}=1\)
\(f(x)=e^x\)とおくと、分子の\(1=e^0\)とみなすことで、微分係数の定義に帰着することができます。
\(\displaystyle \lim_{h \to 0} \frac{e^h-e^0}{h}=\lim_{h \to 0} \frac{e^{0+h}-e^0}{h}=f’(0)=1\)
ちなみに先ほどのクジに出てくる自然対数の底eは?
先ほどのクジの話を一般化すると次のようになります。
当たる確率\(\displaystyle \frac{1}{n}\)のクジを\(n\)回引いて一度も当たらない確率は\(n \rightarrow \infty\)にしたときにどうなるか?
一度のクジで当たらない確率は\(\displaystyle \left( 1-\frac{1}{n} \right)\)なので、\(n\)回引いて一度も当たらない確率は
\(\displaystyle \left( 1-\frac{1}{n} \right)^n\)
\(n \rightarrow \infty\)にしたとき、
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left( 1-\frac{1}{n} \right)^n=\lim_{n \to \infty}\left\{ \left( 1+\frac{1}{-n} \right)^{-n} \right\}^{-1}\)
\(-n =k\)とおくと、\(n \rightarrow \infty\)のとき\(k \rightarrow -\infty\)なので、上記の値は
\(\displaystyle \lim_{n \to \infty}\left\{ \left( 1+\frac{1}{-n} \right)^{-n} \right\}^{-1}=\lim_{k \to -\infty}\left\{ \left( 1+\frac{1}{k} \right)^k \right\}^{-1}=e^{-1}=\frac{1}{e}\)
まとめ
自然対数の底\(e\)は、最初ちょっとわかりにくいのですが、高校数学でいえば統計や微分・積分の分野でよく出てきます。
統計や微分・積分の勉強を進めていくにつれ、それこそ自然に\(e\)を使っていくようになり、そのうち自然対数の底\(e\)が無いと話がしにくい、という感じになっていきます。
他にも沢山の分野に顔を出してくる\(e\)。定義を押さえることも重要ですが、逆に、様々なアプローチからその\(e\)の定義に帰着され、結果その値\(e\)を使うのが便利だ、ということを覚えておいてください。
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