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確率変数の和や積の期待値は?求め方を説明!
こちらの記事で、複数の確率変数を扱う際の「独立」について説明しました。
独立であると何が嬉しいか、というと、確率変数の積の期待値や和の分散が簡単に計算できる、という性質があります。
確率変数の和や積の期待値、和の分散が計算できると、二項分布などの期待値や分散を簡単に計算することができるなど、その後の統計の話がどんどんと広がっていきます。
ということで、まずは和と積の期待値について説明していきましょう!
確率変数の和の期待値
今回は集中講義です!
うむ、最悪な響きですね。
なるべくシンプルに、確率変数の和と積の期待値について説明していくので、しっかりとついてきてください!
手短かにお願いしますよぅ…。
確率変数の和と積の期待値についてはツールの要素が強いので、教科書でもあまり本気で説明していないです。
ただ、この後の統計の話の基礎になるので、結果とその説明は押さえておきます。
まずは和の期待値ですね。
確率変数\(X\)、\(Y\)について、それぞれの期待値を\(E(X)\)、\(E(Y)\)とする。
このとき、確率変数の和\(X+Y\)の期待値\(E(X+Y)\)は
\(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)となる。
この性質は確率変数が独立でなくても使える性質です。
(証明、というより説明)
簡単のために、それぞれの確率変数\(X\)、\(Y\)が取り得る値は2つずつ、とします。
具体的に、\(X=x_1, x_2\)、\(Y=y_1, y_2\)の2つずつ取り得るとします。
確率変数\(X\)、\(Y\)の同時確率分布は次のようになります。
\(x_1\) | \(x_2\) | ||
\(y_1\) | \(p_{11}\) | \(p_{21}\) | \(p_{y1}\) |
\(y_2\) | \(p_{12}\) | \(p_{22}\) | \(p_{y2}\) |
\(p_{x1}\) | \(p_{x2}\) |
※同時確率分布の補足説明
- 例えば、\(x_1\)かつ\(y_1\)を取る確率を\(p_{11}\)とします。
- 一番右の列、例えば、\(p_{y1}\)は\(y_1\)を取る確率になります。具体的には表の確率を右向きに足した、\(p_{11}+p_{21}\)が\(p_{y1}\)になります。一番下の列は\(X\)に関する確率になります。
この同時確率分布を使って、\(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)となることを示します。
まず、\(E(X)=x_1p_{x1}+x_2p_{x2}\)、\(E(Y)=y_1p_{y1}+y_2p_{y2}\)、となります。確認しておいてください。
それをふまえた上で、\(E(X+Y)\)を計算します。
\(E(X+Y)=(x_1+y_1)p_{11}+(x_2+y_1)p_{21}\)
\(\quad\quad + (x_1+y_2)p_{12}+(x_2+y_2)p_{22}\)
\(\quad=x_1p_{11}+y_1p_{11}+x_2p_{21}+y_1p_{21}\)
\(\quad\quad + x_1p_{12}+y_2p_{12}+x_2p_{22}+y_2p_{22}\)
\(\quad=x_1(p_{11}+p_{12})+x_2(p_{21}+p_{22})\)
\(\quad\quad+y_1(p_{11}+p_{21})+y_2(p_{12}+p_{22})\)
\(\quad=x_1p_{x1}+x_2p_{x2}\)
\(\quad\quad+y_1p_{y1}+y_2p_{y2}\)
\(\quad= E(X)+E(Y)\)
つまり、確率変数と確率の展開→組み換えによって説明ができます。
確率変数の取り得る値が増えても、同様に説明することができます。
確率変数の積の期待値
確率変数の積の期待値については次のようになります。
確率変数\(X\)、\(Y\)について、\(X\)、\(Y\)は独立であるとする。
それぞれの期待値を\(E(X)\)、\(E(Y)\)とする。
このとき、確率変数の積\(XY\)の期待値\(E(XY)\)は
\(E(XY)=E(X)E(Y)\)となる。
こちらも同様に説明していきましょう。
(証明、というより説明)
簡単のために、それぞれの確率変数\(X\)、\(Y\)が取り得る値は2つずつ、とします。
確率変数\(X\)、\(Y\)の同時確率分布は次のようになります。
\(x_1\) | \(x_2\) | ||
\(y_1\) | \(p_{11}\) | \(p_{21}\) | \(p_{y1}\) |
\(y_2\) | \(p_{12}\) | \(p_{22}\) | \(p_{y2}\) |
\(p_{x1}\) | \(p_{x2}\) |
まず、\(E(X)=x_1p_{x1}+x_2p_{x2}\)、\(E(Y)=y_1p_{y1}+y_2p_{y2}\)、となります。
加えて、今回は独立という条件がつきますので、\(p_{11}=p_{x1}p_{y1}\)等が成り立ちます。
これは、独立の定義になります。詳しくはコチラ。
これをふまえて同時確率分布を書き直すと、次のようになります。
\(x_1\) | \(x_2\) | ||
\(y_1\) | \(p_{x1}p_{y1}\) | \(p_{x2}p_{y1}\) | \(p_{y1}\) |
\(y_2\) | \(p_{x1}p_{y2}\) | \(p_{x2}p_{y2}\) | \(p_{y2}\) |
\(p_{x1}\) | \(p_{x2}\) |
この同時分布を使って、\(E(XY)=E(X)E(Y)\)となることを示します。
\(E(XY)=x_1y_1p_{x1}p_{y1}+x_2y_1p_{x2}p_{y1}\)
\(\quad\quad + x_1y_2p_{x1}p_{y2}+x_2y_2p_{x2}p_{y2}\)
\(\quad = (x_1p_{x1}+x_2p_{x2})y_1p_{y1}\)
\(\quad\quad + (x_1p_{x1}+x_2p_{x2})y_2p_{y2}\)
\(\quad = (x_1p_{x1}+x_2p_{x2})(y_1p_{y1}+y_2p_{y2})\)
\(\quad = E(X)E(Y)\)
確率変数と確率の共通因数をくくって、因数分解することで説明できますね。
ふいー…文字と添字がたくさん出てきてしんどかったぜ…。
まとめ
今回の性質、
確率変数\(X\)、\(Y\)について、それぞれの期待値を\(E(X)\)、\(E(Y)\)とするとき、
確率変数の和\(X+Y\)の期待値\(E(X+Y)\)は
\(E(X+Y)=E(X)+E(Y)\)、
確率変数\(X\)、\(Y\)が独立であれば、
\(E(XY)=E(X)E(Y)\)
が成り立つ。
ということは、サラッと流されがちですが、基本となりますので押さえておいてください。