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三項間漸化式の解き方総まとめ【これを読めば三項間漸化式はカンペキ!】
三項間漸化式は漸化式の中でも難しい部類に入る問題です。
この記事では三項間漸化式の基本的な解き方と、特殊なケースの三項間漸化式の解き方について説明していきます。
三項間漸化式とは
たろうくん…そのバカでかいジェンガはなに?
はなこさん…俺、すげぇジェンガ買っちゃった…。
確かにバカでかいけど…なにか普通のジェンガと違うの?
このルール!見てくれ!
ルール:このジェンガは「1つ前の人が引き抜いた個数」+「2つ前の人が引き抜いた個数の6倍の個数」引き抜いて下さい。
…これ、引き抜く数、メチャクチャ増えるんじゃない?
そう!コレがこの「鬼ジェンガ」のルールなんだ!ちなみに28000円しました!
…。
ということで、三項間漸化式です。
漸化式には色々なパターンがありますが、「\(n+1\)番目と\(n\)番目の関係」という2つの項の関係を表す式が与えられることが多いです。
ですが、「\(n+2\)番目と\(n+1\)番目と\(n\)番目の関係」の3つの項の関係を表す式が与えられることもあります。
今回の場合、\(n\)番目の人が抜いたジェンガの個数を\(a_n\)とすると、「\(n+1\)番目の人が抜いた個数」+「\(n\)番目の人が抜いた個数×6」によって、次の\(n+2\)番目の人が抜く個数が決まります。
例1.\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)
このような漸化式を三項間漸化式といいます。
…2つの項の漸化式でも大変なのに、三項間漸化式って。
確かに、三項間漸化式は解くのがちょっと大変です。が、慣れればサクッと解けるようになりますよ。とりあえず、二項間の漸化式の基本は素早く解けるようにしておいてください。
三項間漸化式の解き方「基本」
\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)として、先程の例題を解いていきましょう。
例1.\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)
まずは特性方程式といわれる式を解きます。
二項間漸化式のときにも出てきましたが、詳しく言うと成り立ちは違います。ですが、特性方程式の解を使って式を変形する、という使い方については同じです。
三項間漸化式の特性方程式
三項間漸化式\(a_{n+2} + p a_{n+1} +q a_{n} = 0\)の、
\(a_{n+2} \rightarrow x^2\)、\(a_{n+1} \rightarrow x\)、\(a_{n} \rightarrow 1\)と置いた、
\(x^2 + px + q=0\)を三項間漸化式の特性方程式という。
この解\(x = \alpha , \beta\)を使って、三項間漸化式は
\( a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta ( a_{n+1} – \alpha a_n) \)
と変形することができる。
この変形した式の\( a_{n+1} – \alpha a_n =b_n \)と置き換えて解いていく、という流れです。実際は置き換えるのは面倒なので、そのまま解答を書いた方がいいと思います。
三項間漸化式の特性方程式を使って漸化式が変形できることの証明
漸化式お得意の「こういう形になったらいいな」から始めます。
今回はもちろん\( a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta ( a_{n+1} – \alpha a_n) \)の形ですね。この形になったら嬉しいわけです。
この式を展開してまとめると、
\( a_{n+2} – (\alpha + \beta) a_{n+1} + \alpha \beta a_n = 0\)
となります。元の漸化式\(a_{n+2} + p a_{n+1} +q a_{n} = 0\)と比較すると、
\( \begin{cases}
\alpha + \beta = -p \\
\alpha \beta = q
\end{cases} \)
これを満たす\(\alpha\)、\(\beta\)を求めればいい、ということになります。
もちろんこの2つの式から\(\alpha\)もしくは\(\beta\)を消去して求めてもいいんですが、もっといい方法があります。
それは、「解と係数の関係」です。
\( \begin{cases}
\alpha + \beta = -p \\
\alpha \beta = q
\end{cases} \)
は、正に解と係数の関係の形をしていますよね?解と係数の関係は、
\( x^2 + p x + q =0\)の解を\(\alpha\)、\(\beta\)とする。
\(\Leftrightarrow\) \( \begin{cases}
\alpha + \beta = -p \\
\alpha \beta = q
\end{cases} \)
というものなので、この矢印を\(\Leftarrow\)向きにたどれば、
\( \begin{cases}
\alpha + \beta = -p \\
\alpha \beta = q
\end{cases} \)のとき、\(\alpha\)、\(\beta\)を解に持つ二次方程式は\(x^2 + px + q =0\)
となります。
なので、\(x^2 + px + q =0\)の解\(\alpha\)、\(\beta\)を使えば\( a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta ( a_{n+1} – \alpha a_n) \)の形に変形できる、というわけですね。
ということで、流れとしては、
- 特性方程式を立式して解く。このときの解を\(x = \alpha, \beta\)とする。
- 解\(x = \alpha, \beta\)を使って、\( a_{n+2} – \alpha a_{n+1} = \beta ( a_{n+1} – \alpha a_n) \)と変形する。
- \(a_{n+1} – \alpha a_n = b_n\)とすれば、等比数列と考えられるので、解く。すると、\(a_{n+1} – \alpha a_n = \)(\(n\)の式)…(a)が得られる。
- \(x = \alpha, \beta\)を入れ替えた\( a_{n+2} – \beta a_{n+1} = \alpha ( a_{n+1} – \beta a_n) \)も同様に解く。すると、\(a_{n+1} – \beta a_n = \)(\(n\)の式)…(b)が得られる。
- (a)ー(b)を計算して、\(a_{n+1}\)を消去→\(a_n = \cdots\)の形に変形すればできあがり。
基本の等比数列を二回解くことになります…面倒ですね。
でも、慣れれば結構サクサクと解けますよ。
\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)の特性方程式は\(x^2 = x + 6\)なので、
\( x^2 -x -6 = 0 \)
\( (x+2)(x-3) = 0\)
\( x = -2, 3\)
この特性方程式を解くところは解答に残さなくても大丈夫です。
(解答)
\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)
\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} +2 a_{n+1} = 3 ( a_{n+1} +2 a_n) \)
数列{\(a_{n+1} + 2 a_n\)}は初項\(a_2 + 2 a_1 = 2 + 2 = 4\)、公比3の等比数列。
(↑いちいち\(b_n\)と置き換えると面倒だし、初項を間違える可能性があるので、そのまま進めた方がいいです)
よって、\(a_{n+1} + 2 a_n = 4 \cdot 3^{n-1} \)…①
一方、\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} -3 a_{n+1} = -2 ( a_{n+1} -3 a_n) \)
数列{\(a_{n+1} – 3 a_n\)}は初項\(a_2 – 3 a_1 = 2 – 3 = -1\)、公比\(-2\)の等比数列。
よって、\(a_{n+1} – 3 a_n = (-1) \cdot (-2)^{n-1} \)…②
①ー②
\(5 a_n = 4 \cdot 3^{n-1} + (-2)^{n-1}\)
\(\displaystyle a_n = \frac{1}{5} \{ 4 \cdot 3^{n-1} + (-2)^{n-1} \} \)…(答)
三項間漸化式の解き方「応用」
あまり応用…という程でもないですが、特性方程式の解が特殊な場合は押さえておかないといけない解法もあります。
特性方程式の解の1つが「1」
こちらは、特別な解法が必要なわけではありませんが、特性方程式の解の1つが「\(1\)」のときは別の解き方もできます。
例2.\(a_{n+2} = 3 a_{n+1} – 2 a_n\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)
特性方程式を立式すると、\(x^2 = 3x – 2\)。
\(x^2 -3x + 2 = 0\)
\( (x-1)(x-2) = 0\)
\( x = 1, 2\)
特性方程式の解の1つが「\(1\)」のときは階差数列を使って解くこともできます!
(解答)
\(a_{n+2} = 3 a_{n+1} – 2 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} – a_{n+1} = 2 ( a_{n+1} – a_n) \)
数列{\(a_{n+1} – a_n\)}は初項\(a_2 – a_1 = 2 – 1 = 1\)、公比2の等比数列。
よって、\(a_{n+1} – a_n = 2^{n-1} \)…①
これは階差数列の一般項を表すので、ここから階差数列の解法にもっていきます。
数列{\(a_n\)}の階差数列の一般項は\( 2^{n-1} \)なので、
\(n \geq 2\)のとき
\(\displaystyle a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1}(2^{k-1}) \)
\(\displaystyle \quad = 1 + \frac{2^{n-1}-1}{2-1} \)
\(\displaystyle a_n = 2^{n-1} \)
これは\(n=1\)のときも成り立つ。
よって\(a_n = 2^{n-1} \)…(答)
ですが、正直「基本」の解き方の方がラクです。
階差数列は\(\sum\)計算も必要だし、解答の書き方も守らなければいけないことが多いので面倒なんですよねぇ…。今回はたまたま\(\sum\)計算が簡単だからよかったですが…。
(基本の解き方だとこうなります。①までは一緒)
\(a_{n+2} = 3 a_{n+1} – 2 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} -2 a_{n+1} = a_{n+1} -2 a_n \)
数列{\(a_{n+1} -2 a_n\)}は初項\(a_2 -2 a_1 = 2 – 2 = 0\)の定数数列。
(↑解の1つが「\(1\)」のときは定数数列が出てきます。)
よって、\(a_{n+1} -2 a_n = 0\)…②
①ー②
\(a_n = 2^{n-1} \)…(答)
慣れたらこっちの方がラクです。
特性方程式の解が重解
これは解き方を覚えておかないと解けないので、しっかり押さえておきましょう。
例3.\( a_{n+2} = 4 a_{n+1} -4 a_n\)、\( a_1 = 1\)、\(a_2 = 4\)
特性方程式を立式すると、\( x^2 = 4x -4\)。
\( x^2 -4x + 4 = 0\)
\( (x-2)^2 = 0\)
\( x = 2\)
…重解が出てきてしまいましたね。これ、あとでたろうくんが困ります。
(…出たな。イヤなことだけ当てる預言者め。)
一応\( \alpha = 2\)、\(\beta = 2\)として変形は可能です。(展開して元の式に戻るのを確認してみて下さい)
(解答)
\(a_{n+2} = 4 a_{n+1} -4 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} -2 a_{n+1} = 2 ( a_{n+1} -2 a_n ) \)
数列{\(a_{n+1} – 2 a_n\)}は初項\(a_2 -2 a_1 = 4 – 2 = 2\)、公比2の等比数列。
よって、\(a_{n+1} – 2 a_n = 2 \cdot 2^{n-1} = 2^n\)
…
ほら、困った。
ここまできたら、困ったことに気づきますね。\(\alpha\)、\(\beta\)を入れ替えても同じ式が出てきます。
当然、同じ式が出てきても、引いて\(a_{n+1}\)を消去することはできません。
ということで、この式をどうにかするしかありません。
\(a_{n+1} – 2 a_n = 2^n\)
\(a_{n+1} = 2 a_n + 2^n\)
結論から言うと、両辺を\(2^{n+1}\)で割りましょう。
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}} = \frac{2 a_n}{2^{n+1}} + \frac{2^n}{2^{n+1}}\)
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}} = \frac{a_n}{2^{n}} + \frac{1}{2}\)
数列\(\displaystyle \left\{ \frac{a_{n}}{2^{n}} \right\} \)は、初項\(\displaystyle \frac{a_{1}}{2^{1}} = \frac{1}{2}\)、公差\(\displaystyle \frac{1}{2}\)の等差数列。
よって、\(\displaystyle \frac{a_{n}}{2^{n}} = \frac{1}{2} + (n-1)\frac{1}{2} = \frac{1}{2}n\)
\(\displaystyle a_{n} = \frac{1}{2}n2^{n} = n 2^{n-1} \)…(答)
この解き方についてはこちらの記事をご覧ください。
ちなみに、重解をもたないパターンでもこの方法は有効です。
例1.\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)
一番最初の例題を今の方法で解いてみましょう。
(解答)
\( a_{n+2} = a_{n+1} + 6 a_n\)を変形して、
\( a_{n+2} +2 a_{n+1} = 3 ( a_{n+1} +2 a_n) \)
…\(a_{n+1} + 2 a_n = 4 \cdot 3^{n-1} \)…①
ここから、\(\alpha\)、\(\beta\)を入れ替えた変形をせずに、\(3^{n+1}\)で割ります。
\(a_{n+1} = – 2 a_n + 4 \cdot 3^{n-1} \)
両辺を\(3^{n+1}\)で割ると、
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{3^{n+1}} = \frac{- 2 a_n}{3^{n+1}} + \frac{4 \cdot 3^{n-1}}{3^{n+1}}\)
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{3^{n+1}} = -\frac{2}{3}\frac{a_n}{3^{n}} + \frac{4}{9}\)
\(\displaystyle \frac{a_n}{3^{n}} = b_n\)とおくと、
\(\displaystyle b_{n+1} = -\frac{2}{3}b_n + \frac{4}{9}\)
(二項間の特性方程式\(\displaystyle x = -\frac{2}{3}x + \frac{4}{9}\)を解くと\(\displaystyle x =\frac{4}{15}\))
\(\displaystyle b_{n+1} -\frac{4}{15} = -\frac{2}{3} \left( b_n – \frac{4}{15} \right)\)
数列\(\displaystyle \left\{ b_n – \frac{4}{15} \right\} \)は、初項\(\displaystyle b_1 – \frac{4}{15} = \frac{a_1}{3^1}- \frac{4}{15} = \frac{1}{15}\)、公比\(\displaystyle -\frac{2}{3}\)の等比数列。
よって、
\(\displaystyle b_n -\frac{4}{15} = \frac{1}{15} \left( -\frac{2}{3} \right)^{n-1}\)
\(\displaystyle \frac{a_n}{3^n} = \frac{4}{15}+\frac{1}{15} \left( -\frac{2}{3} \right)^{n-1}\)
\(\displaystyle a_n = \frac{4}{15}3^n+\frac{1}{15} \frac{(-2)^{n-1}}{3^{n-1}} 3^n\)
\(\displaystyle a_n = \frac{4}{5}3^{n-1}+\frac{1}{5} (-2)^{n-1}\)
\(\displaystyle a_n = \frac{1}{5} \{ 4 \cdot 3^{n-1}+(-2)^{n-1} \} \)…(答)
ただ、やはり「基本」の解き方の方がラクですね。
基本の解き方は「2つ漸化式を解かないといけない」ので面倒な感じがしますが、実際その2つの漸化式は等比数列になるので解くこと自体は簡単です。
基本の解き方でいけるときは基本の解き方でいきましょう。ただ、重解が出たときだけは解き方を覚えておかないと解けないので注意しましょう。
三項間漸化式の練習問題
問.条件、\(a_{n+2} = a_{n+1}+a_n\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 1\)で表される数列{\(a_n\)}の一般項を求めよ。
答え
\(\displaystyle a_n = \frac{1}{\sqrt{5}} \left\{ \left( \frac{1+\sqrt{5}}{2} \right)^n – \left( \frac{1-\sqrt{5}}{2} \right)^n \right\}\)
問.条件、\(a_{n+2} = 5a_{n+1} -6 a_n + 2\)、\(a_1 = 1\)、\(a_2 = 2\)…①について、次の各問いに答えよ。
(1) \( a_{n+2} -\alpha a_{n+1} + \gamma = \beta(a_{n+1} -\alpha a_n + \gamma)\)を満たす\(\alpha\)、\(\beta\)、\(\gamma\)の組を1つ求めよ。
(2) 条件①によって定められる数列{\(a_n\)}の一般項\(a_n\)を求めよ。
答え
(1) \(\alpha = 2\)、\(\beta = 3\)、\(\gamma = 1\)または\(\alpha = 3\)、\(\beta = 2\)、\(\gamma = 2\)
(2) \(a_n = 3^{n-1} – 2^{n-1} +1 \)
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三項間漸化式の解き方まとめ
三項間漸化式の解き方のまとめでした。
2回変形して漸化式を解く、というのは慣れてしまえばそこまで難しくありません。
重解が出てきたときに備えて\(r^{n+1}\)で割る、という操作は覚えておきましょう。