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複素数とは?「二乗すると-1」になる数って?
「二乗すると−1になる数って…そんなものあるわけないじゃないか!」と思ったアナタ…その通りです。
少なくとも実数の範囲では、ですが。
この記事では、「二乗すると−1になる数」を考えることで、なにが嬉しいのか、を説明していきます。
複素数とは?「i」ってなに?
せんせい…虚数ってなんなんですか?訳わかんないんですけど…。
んー…まぁ確かに、今までの常識ではわかりにくい話ですから、戸惑うかもしれませんね。ちょっと丁寧に話をしますか。
よろしくお願いします。
では問題です。\( x^2 = -1 \)を解いてください。
イキナリですか…でもこれがアレでしょ?虚数ってやつを使うんでしょ?
\(x\)の方程式\( x^2 = -1 \)。解けますか?
普通に解こうとすると「\( x = \pm \sqrt{-1} \)…?」となり、「\(\sqrt{\quad}\)の中身はー(マイナス)であってはいけない」というルールに反することになります。二乗して\(-1\)になる実数は存在しないからです。
そこで、「そんな数字がないなら作っちゃえば?そしたら\( x^2 = -1 \)も解けるじゃん。(ただし、それは実数ではないけどね)」という発想で生まれたのが「虚数(実在しない数)」です。
少し具体的に話をすると、「二乗して\(-1\)になる数を虚数単位\(i\)としましょう」と定めます。
つまり、\(i^2=-1\)となります。
虚数単位\(i\)とは、\(i^2 = -1\)となる性質をもつ数
ちなみに、虚数にも符号(\(\pm\))の概念はあるので、\(x^2=-1\)の解は\(x=\pm i \)になります。
\(i^2=-1\)はいいと思いますが、\(-i\)についても、\((-i)^2=(-1)^2 \cdot i^2 = 1 \cdot (-1)=-1 \)となって、虚数単位\(i\)にひっついてるー(マイナス)も二乗してしまえば普通通り+(プラス)になるからです。
んー…まぁここまではギリギリ理解しました。「二乗したら\(-1\)になる数を虚数\(i\)としましょう」ということですよね?
そうですね。そんな数字は実在しないけど、実数の外に存在するとして定義しましょう、という話です。
んー…しかし、そんな実在しない数なんて考えて意味あるんでしょうか…?
意味があるかないか…。それは、「そいつを考えることでいいことがあれば意味がある」んです。
例えば空想上の生き物やゲーム、漫画なんかは実在しませんよね?でも、「そんなのは現実ではありえないんだから考えても意味ない!」と言ってしまったら…まぁ「頭がカタい」と思われますよね笑
そういう空想は現実世界で「エンターテイメント」として実益を出しています。超売れてる漫画を「実在しない話なんだからダメだ!」と否定する人はいないと思います。
まして、数学は論理的にモノを考える世界です。
そこで「これは実在しないけど、そういうものがあるとして定義しておいた方がいい」と判断されたのなら、それは「あったほうがいいもの」なんです。
実際に虚数は、電磁気の記述をスッキリさせたり、最新の量子力学では必要不可欠なモノとして、現実世界でも重要な要素を担っています。
電磁気なんか身の回りに山ほどありますからね…虚数がなければアナタが今手に持っているスマホやパソコンも動かないかも…です。
とにかく、虚数は論理的に必要なモノなので知っておいて損はない、と思ってもらえればいいかな、と思います。特に回転や波との相性は抜群です。
この辺りはのちほど2022年度新教育課程、数学C「複素数平面」(旧数学III)で少し体験することになるかな、と思います。
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虚数?複素数?どんな分類になるの?
この虚数単位\(i\)を使って、次のように表せる数を虚数といいます。
虚数は\(a+bi\)と表せる数 (ただし、\(a\)と\(b\)は実数で \(b \neq 0\)とする。)
また、\(a\)のことを実部、\(b\)のことを虚部、という。
これは、虚数単位\(i\)だけでなく、「その実数倍と、実数を加えた数を虚数と呼びましょう」という話です。
例.\( 1+2i\)、\(\displaystyle 1-\frac{1}{2}i\)、\( \displaystyle \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2}i\)という数字は全部虚数、といえます。「\(i\)があれば虚数」ですね。
特に\(a=0\)、つまり実部が0のとき、純虚数、と言います。
例.\( i(=0+i)\)、 \( 5i(=0+5i) \)、\(-3i(=0+(-3i))\)、\(\pi i(=0+\pi i)\)。これらは実部が0なので純虚数といえます。
また、間違いやすい用語として「複素数」という用語があります。
複素数とは
\(a+bi\)の形で表せる数。 (ただし、\(a\)と\(b\)は実数)
また、\(a\)のことを実部、\(b\)のことを虚部、という。
さきほどとの違いは「\(b=0\)でも構わない」ということです。
要は「\(a+bi\)の形で表せるものは全部『複素数』ということにしよう。実数も\(a+bi\)の\(b=0\)となった場合、と考えればいいよね」ということで、実数と虚数(\(i\)が必ずひっついてるもの)を全部ひっくるめて「複素数」と言いましょう、という話です。
なんとなく用語をテキトーにしがちなのが複素数です。複素数に限らず、言葉は大事ですので、言葉を間違えずに使いましょう!
はーい。
複素数の計算を例題を使ってやってみよう!
それでは少し具体的に計算してみましょう。
問.\( x^2 = -4\)を解きなさい。
答え
(解)
\(x^2 = -4\)より
\( x=\pm \sqrt{-4}\)
\( =\pm \sqrt{4}\sqrt{(-1)}\)
よって \( x =\pm 2i\)…(答)
問.\(\sqrt{-3} \cdot \sqrt{-27}\)を簡単にしなさい。
答え
\(\sqrt{-3} \cdot \sqrt{-27} = \sqrt{(-3) \cdot (-27) } = \sqrt{81}=9\)
とするのは間違いです。
これは \(\sqrt{a \cdot b} =\sqrt{a}\sqrt{b}\)と計算できるのは、\(a\)、\(b\)が正の数、という条件付きだからです。
例えば、\(\sqrt{4}\)について、\(\sqrt{4} = \sqrt{(-2)(-2)}\)とみなすこともできますが、\(\sqrt{(-2)(-2)}=\sqrt{-2}\sqrt{-2}\)と計算することはできませんよね?この場合、\(\sqrt{4} = \sqrt{2 \cdot 2} \)と見なさなければなりません。
ですので、\(\sqrt{-3} \cdot \sqrt{-27}\)のように、そもそも実数の範囲であり得ない形で問題が与えられたら、虚数の範囲で話をしてやらなければいけません。
(解)
\(\sqrt{-3} \cdot \sqrt{-27} = \sqrt{3} i \cdot \sqrt{27} i \)
\(=\sqrt{81} i^2\)
\(=-9\)(←\(i^2=-1\)なので)…(答)
問.\(x\)の方程式、\( x^2 + x +1 = 0\)を解きなさい。
答え
こういう2次方程式の問題で虚数は威力を発揮します。
(解)
因数分解ができないので、解の公式を使うしかなさそうです。
\( x^2 + x +1 = 0\)より解の公式を使うと、
\(\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{1^2-4 \cdot 1 \cdot 1}}{2 \cdot 1} \)
\(\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{-3}}{2} \)
ここで、\( \sqrt{-3} = \sqrt{3}i\)なので
\(\displaystyle x=\frac{-1 \pm \sqrt{3}i}{2} \)…(答)
それでは、ちょっとだけ複素数の計算をしてみましょう。
複素数の計算は、\(i^2=-1\)になることに注意すれば簡単です。コツは「実部と虚部を別の文字のようにして和や積の計算をする」ことです。
問. \( (1+2i)+(3-4i)\)を計算せよ。
答え
これは簡単ですね。
(解)
\( (1+2i)+(3-4i)=(1+3)+(2-4)i=4-2i\)…(答)
和や差は実部同士、虚部同士を計算するだけです。
これは簡単ですね。
(解)
\( (1+2i)+(3-4i)=(1+3)+(2-4)i=4-2i\)…(答)
和や差は実部同士、虚部同士を計算するだけです。
問.\( (1+2i)(3-4i)\)、\((1-i)^2\)を計算せよ。
答え
基本的には分配法則のようにして計算します。ということは、展開公式も使える、ということです。
ただし、\(i^2=-1\)となることには注意してください。
(解)
\( (1+2i)(3-4i)=1 \cdot 3 + 1 \cdot(-4i) + 2i \cdot 3 + 2i \cdot (-4i)\)
\(=3-4i+6i-8i^2=3-4i+6i+8\)(←\(i^2=-1\))
\(=11+2i\)…(答)
\((1-i)^2 = 1^2-2 \cdot 1 \cdot i +i^2\)(←展開公式が使える)
\(=1-2i-1=-2i\)…(答)
「共役な複素数」とは?
複素数\( a + bi\)に対して\( a – bi\)を、\( a + bi\)に対する共役(きょうやく)な複素数といいます。
例えば、実数係数の2次方程式を解いて虚数が出てくる場合、必ず解の公式を使った結果として虚数の答えが出てくるので、共役な複素数がペアになって現れます。
例.\(x^2 + 2x + 2 = 0\)を解くと、\(\displaystyle x = \frac{-1 \pm \sqrt{1^2-1 \cdot 2 }}{1} = -1 \pm \sqrt{-1} = -1 \pm i\)
\(x\)の係数が偶数のときの解の公式についてはこちらで詳しく説明をしているのでご覧ください。
共役な複素数は「分母の実数化」でよく使いますが、数学C「複素数平面」(旧数学III)で複素数についてより深く学んだときに重要な役割が出てきます。
さしあたって「共役な複素数を掛けると実数になる」ということは覚えておきましょう。これを使って分母の実数化をします。
例.\((-1+i)(-1-i)=(-1)^2-i^2=1-(-1)=2\)
複素数において注意すること
わざわざ見出しをつけて話すようなことではないかもしれませんが、本当によくある間違いを一つだけ伝えさせてください。これは、教員時代でも複素数を教えるときに必ずしていた話です。
それは「なんでもかんでも虚数を使うな」ということです。
特にグラフを扱うときです。
それでは、次の問題を解いてみてください。
問.関数\(y=x^2+2x+2\)が表すグラフと\(x\)軸の交点の座標を求めよ。
ふっ…今更この僕にこんな初歩的な問題を…一瞬で解いてみせますよ。
(解)
\(y=x^2+2x+2\)に\(y=0\)を代入する。
\(x^2+2x+2=0\)
(因数分解は…使えないな…解の公式だな。\(x\)の係数が偶数だし、ラッキーだな。サクッと解いてやるぜ。)
(続き)
解の公式から
\(\displaystyle x = \frac{-1 \pm \sqrt{1^2-1 \cdot 2 }}{1} = -1 \pm \sqrt{-1} \)
(あれ?\(\sqrt{\quad}\)の中身がー(マイナス)になったぞ…でもまぁ、虚数習ったし、解けるわな)
(続き)
\(\displaystyle x = -1 \pm i\)
よって交点は\((-1+i , 0)\)、\((-1-i , 0)\)…(答)
できました!
はい、ぶー!ぜんぜんちがいまーす!!
座標平面に\((-1+i , 0)\)、\((-1-i , 0)\)なんて点はありませーん。
どこにあるんですかぁ?教えてくださーい。
…。(いじわるめ)
虚数を教えると、なんでもかんでも虚数を使いたがる人がいます。
グラフは前提として実数の話をしているので、虚数が出てきたらおかしい、と思いましょう。計算ミスをしているか、グラフ的に他の意味合いがあるか、のどちらかです。
(先ほどの問題の解答1)
\(y=x^2+2x+2=(x+1)^2+1 > 0\)(←もちろん\(=0\)としたときの答えが虚数になることが計算をしてみてわかっている。いきなり平方完成をしたりしない。)
よって、\(x\)軸(\(y=0\))との交点なし…(答)
(先ほどの問題の解答2)
\(y=x^2+2x+2\)に\(y=0\)を代入する。
\(x^2+2x+2=0\)
判別式を\(D/4\)とすると、\(D/4=1^2-1 \cdot 2 =-1 < 0\)。(←もちろん\(=0\)としたときの答えが虚数になることが計算をしてみてわかっている。いきなり判別式をとったりしない。)
よって、実数解がないので、交点なし…(答)
今まであんまり実数とか考えてこなかったけど、虚数を勉強したら「実数であるかどうか?」は結構重要な条件になってくるんだな…。
その通りですね。今、実数の範囲で考えているのか?を考えるのはとても重要です。逆に、複素数の範囲で考えていたら「実数かどうか?」は大きな条件になってきます。
まとめ
虚数、複素数の基本について説明しました。
「なんでこんなものを考えるの?」となりがちな虚数ですが、使いこなせば強力なツールになります。
特に「複素数平面」を勉強すれば、複素数の意味や考え方の幅がグッと広がるので、まずは基本を押さえておきましょう。
虚数を扱う際の注意点も挙げておきましたので、しっかり確認しておいてください。
複素数平面まで学習したら、ぜひこちらも読んでみてください。
『数学ガールの秘密ノート』シリーズは基本から丁寧に話が進んでいくのでわかりやすいですし、なにより物語として面白いのでオススメです!