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反復試行の確率は覚えてはいけない!?反復試行の確率の本質的な理解!
反復試行の確率は確率の中でも「複雑で分かりにくい」と思う人が多い公式・考え方です。
ですが、「なにをやっているか?」をしっかりと押さえておくと、とたんに公式の見え方が変わってきます。
反復試行の確率は、1度その本質を納得いくまで勉強しておきましょう!
こちらも合わせて読んでいただけると、理解が深まると思います!
反復試行の確率
なぜだぁ!なぜなんだぁ!
…。
なぜ反復試行の確率はあんなに複雑なんだぁ!
……。
誰か、簡単に覚えられるコツとか教えてくれないかなぁ!
アレはちゃんと本質を理解する方が結果簡単ですよ?
…。
ということで、反復試行の確率は次のようになります。
反復試行の確率
1回の試行である事象Aが起きる確率を\(p\)、事象Aが起きない確率を\(1-p=q\)とする。
この試行を\(n\)回繰り返して事象Aが\(r\)回起きる確率は、
\(_nC_rp^rq^{n-r}\)
となる。
ただ、太郎君が言うように複雑ですし、先生が言うように本質を理解した方が手っ取り早いので、「公式を覚える」というよりも「反復試行がなぜこのような形をしているか?」を説明していきます。
なぜ反復試行の確率に「C」がくっついているのか?
特にあの「C」の意味が全然わからないんですけど…。
それでは例題を使って説明しましょうか。
例.赤玉2個、白玉1個が入った袋から1つ玉を取り出して色を確認して元に戻す。この試行を5回繰り返したとき、赤玉が2回出る確率を求めよ。
まずは解答を作ってみましょう。
とりあえず、上記の公式に当てはめて計算しましょう。
(解)
1回の試行で、
赤玉が出る確率は\(\displaystyle \frac{2}{3}\)、
白玉が出る確率は\(\displaystyle \frac{1}{3}\)。
よって、5回の試行のうち赤玉が2回出る確率は、
\(\displaystyle _5C_2 \left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3= \frac{40}{243}\)…(答)
んー…。だからまぁ、そうなんですけど…。
では、少しずつ解説していきましょうか。
まずは、「5回中2回、赤が出る」パターンを書き出してみましょう。
え…全部ですか?なんかデジャブなんですけど…。
いいから、書き出してください。
ハイ…。
赤が出る→○、赤が出ない→×と表しましょう。
○○××× | ○×○×× | ○××○× | ○×××○ |
×○×○× | ××○○× | ××○×○ | ×××○○ |
よし、これで全部だな。
違いますよ、足りてませんよ。
え…本当ですか?っていうか、なんで足りてないってすぐにわかるんですか?
だって計算すれば総数はわかりますから。今まで書き並べてきて、何か気づきませんでした?
え…なんだろうな…なんか○をどこに書こうかな、って考えながら書き並べてましたけど…。
じゃあ○って5か所中何か所に入るんですか?
そりゃ2か所ですよ。
ということは、その2か所がどこか?を考えればいいんじゃないですか?
5か所から○を書く場所を2か所選べばいいんですかね?
ハイ!そこです!つまり、5か所から2か所選ぶパターン、というのは…?
あ…\(_5C_2\)…。
そうです。これが\(C\)の正体ですね!「事象Aが起きる場所を\(n\)回の試行から\(r\)か所選ぶ」ということです!
ん…?で、それでどうするんですか?
はい、ここから仕上げまで一気にいきます!この「\(C\)は事象Aが\(n\)回中\(r\)回起きるパターン数だ」ということは最重要事項なので押さえておいてください。
では、パターン数をちゃんと数えて、最後まで仕上げていきましょう。ちなみに、その隣にそれが起きる確率も書き出しておきます。
○○××× | \(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
○×○×× | \(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
○××○× | \(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
○×××○ | \(\displaystyle \left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
×○○×× | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
×○×○× | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
×○××○ | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
××○○× | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
××○×○ | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
×××○○ | \(\displaystyle \left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{1}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)\left( \frac{2}{3} \right)=\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\) |
あれ?全パターン、結局確率は\(\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)なんですね。
1〜5回までの試行は独立だから、単純に掛ければいいし、掛け算は順番を変えても良いですからね。全パターン、同じ\(\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)になります。
これが2つ目のポイントです!どのパターンも全て同じ確率、\(\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)になります。
よって、\(\left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)となる確率が\(_5C_2\)パターンあるので、計算方法としては、\(\displaystyle _5C_2 \left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)となるのです。
ちなみに細かい話をすると、パターンで分けているのでこれは「場合分け」の考え方になります。ですので、他の確率の問題同様、最後には全てのパターンを足すんですね。ですが、全てのパターンが同じ確率なので、パターン数を掛けてやれ!ということになります。
まとめると、
- \(_nC_r\)は「Aが起きる→○」「Aが起きない→×」の並べ方のパターン数を数えている。
- \(p^rq^{n-r}\)はそのパターン一つ一つが起きる確率で、全てのパターンで同じである。
この2点を押さえていればOKです!
もう少し反復試行の確率を深掘りする
では、先ほどの例題を使ってもう少し反復試行の確率について理解を深めていきましょう。
例えば、\(\displaystyle _5C_2 \left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)の「\(C\)」についてですが、\(_5C_2\)を\(_5C_3\)としてもOKです。
そりゃそうでしょう。\(C\)には\(_nC_r=_nC_{n-r}\)っていう性質があるんだから。
もちろん\(C\)の性質を使っても説明できますが、先ほどの○×の並べ方のパターン数で説明できます。\(_5C_3\)は「5か所から3か所選ぶ選び方」ですよね?今度は何を選んだことになりますか?
さっきは「5か所から○を書く場所を2か所選びました」よね。今回は3か所選ぶ…ということなので…×を書く場所ですかね?
その通りです!つまり「○を書く場所を選ぶ代わりに×を書く場所を選ぶ」と計算してもOKですよね。
つまり、\(\displaystyle _5C_3 \left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)と計算することもできます。
なるほど、反復試行の確率の\(C\)って複雑なイメージですけど、結構自由なんですね。
それではもう一ついきましょう。先ほど、\(C\)は「○×の並べ方のパターン数」と言いましたよね。「○2つ、×3つを並べる並べ方」は他の計算方法がありましたが、覚えてますか?
あ、「同じものを含む順列」ですね!
\(C\)は「○×の並べ方のパターン数」のことなので、単純に「○×の並べ方」と捉えてもいいです。つまり、「同じものを含む順列」として計算してもOKです。
今回の場合、「5つの○×を並べるのですが、そのうち○2つ、×3つは同じものと見なす」ので、\(_5C_2\)の代わりに、
\(\displaystyle \frac{5!}{2!3!}\)
と計算することもできます。
つまり、\(\displaystyle \frac{5!}{2!3!} \left( \frac{2}{3} \right)^2 \left( \frac{1}{3} \right)^3\)となります。
反復試行の応用
ランダムウォークの応用問題を出しましょう!
ここまでの話がちゃんと理解できていれば解けるはずです!
不安…。
例.数直線上の原点に、次のルールで動く点Pがある。
ルール:1回サイコロを投げたとき、1の目が出たら座標+1、2か3の目が出たら座標−1、4か5か6が出たら動かない。
サイコロを6回投げたとき、座標3にいる確率を求めよ。
む…動き方が3通りあるぞ…。これって反復試行の確率なんですか?
◯×の並び方、という考え方が理解できれば、それを応用すれば大丈夫です。
(解答)
1の目が出る→A、2か3の目が出る→B、4か5か6の目が出る→Cとします。
Aの確率\(\displaystyle p_A=\frac{1}{6} \)、Bの確率\(\displaystyle p_B=\frac{1}{3}\)、Cの確率\(\displaystyle p_C=\frac{1}{2}\)となります。
一番わかりやすいパターンは、
\( (A,B,C)=(3,0,3) \)
でしょう。このときの確率は、
\(\displaystyle _6C_3 \cdot p_A^3 \cdot p_C^3 = 20 \left( \frac{1}{6} \right)^3 \left( \frac{1}{2} \right)^3=\frac{5}{432}\)
よし、できたぞ!
まだですよ。もう1パターンあります。
なぜじゃあ…。
こういうときは、AかBかCを基準に他のパターンがないかちゃんと調べる必要があります。
今回はAが3回以上出ないといけないので、A4回、A5回、…と、Aが出る回数を増やしていきながら検討していきます。
Aが4回のとき、
\( (A,B,C)=(4,1,1) \)
となります。
なるほど、まだ別のパターンがあったのか…。でも、これ\(C\)の部分どうするんだろ?
ここで、反復試行の\(C\)の正体は「◯×の並び方」ということを思い出しましょう。
今回は\( (A,B,C)=(4,1,1) \)なので、この考え方を応用すると、「A4つ、B1つ、C1つの並び方」を計算すればいいことになります。
したがって、パターン数は「同じものを含む並べ方」で計算すると、
\(\displaystyle \frac{6!}{4!1!1!}\)
となります。よって、このときの確率は、
\(\displaystyle \frac{6!}{4!1!1!} p_A^4 \cdot p_B^1 \cdot p_C^1 = 30 \left( \frac{1}{6} \right)^4\left( \frac{1}{3} \right)^1 \left( \frac{1}{2} \right)^1=\frac{5}{1296}\)
ちなみに、A5回のときは座標3になるためには\( (A,B,C)=(5,2, \cdots ) \)となるので(Bもたくさん出ないといけない)、これ以上Aを増やしても6回のサイコロ投げで座標3になることはありません。
以上から求める確率は、
\(\displaystyle \frac{5}{432}+\frac{5}{1296} = \frac{5}{324} \)…(答)
なるほど…。\(C\)は「◯×の並び方」と思っておけば、3通りの確率の場合でも並び方の計算で対応できるんですね。
まとめ
反復試行の確率についての説明でした。
反復試行の確率は「覚えよう」とする人が多いのですが、わかりにくいですし、丸暗記は効率がよくありません。
しかも、このあと「二項定理」や「二項分布」の話でも全く同じ考え方をするので、理屈を押さえておいた方が逆に覚えやすいです。
今回の記事は結構長いですが、やっていることのポイントはそこまで多くないです。
しっかり理解してほしいですね!